和傘は日本の伝統工芸品であり、日差しを遮る実用性はもちろん、その美しさは日本の風土と美意識を今に伝える貴重な存在です。本記事では、番傘や蛇の目傘など和傘の種類、製造方法、代表的な産地ついてご紹介します。また、和傘の現代活用や洋傘の普及についても触れ、日本の傘文化の魅力を探ります。
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和傘とは?唐傘との違いは?
和傘の歴史

和傘は竹の骨組みに和紙を貼って作られるものです。洋傘と異なり、和傘は骨組みが細かく、開いたときに美しい放射状の骨が見えるのが特徴です。
和傘は、平安時代に中国から日本へ伝わったと言われています。当時の和傘は現在のような形ではなく、「蓋(きぬがさ)」や「天蓋(てんがい)」 と呼ばれ、天蓋や覆いのような形状でした。主に貴族や高位の人物に差しかけられ、日除けや魔除け、権威の象徴として用いられていました。この時代の和傘は開いた状態のままで、まだ閉じることができませんでした。
その後、時代が進むにつれて和傘の構造は改良され、安土桃山時代(16世紀後半~17世紀)には現在のように開閉できる和傘が登場しました。これにより、実用的な道具としての和傘が普及し、庶民の間でも使われるようになります。江戸時代には、油を塗って耐水性を高めた番傘や、美しいデザインの蛇の目傘などが作られ、和傘文化が一気に広がりました。
和傘と唐傘の違いは?
和傘と唐傘(中国式傘)は見た目が似ていますが、骨組みの作り方に違いがあります。唐傘は、親骨(メインの骨)に小骨を差し込む構造になっています。そのため、親骨を太く作らなければならず、傘を閉じると骨の数が少ないわりに太くかさばるのが特徴です。一方、和傘は、親骨を小骨が挟み込む構造になっています。この作りのおかげで、親骨と小骨を細く作れるため、傘を閉じたときにスリムで軽い仕上がりになります。
和傘の種類と特徴。雨にも使えるって本当?

和傘にはさまざまな種類があり、それぞれ用途や特徴が異なります。一般的に、和傘は竹と和紙で作られていますが、油を引いたものは雨傘としても使用できるのが特徴です。では、代表的な和傘の種類を見ていきましょう。
①番傘(ばんがさ)
番傘は、昔、庶民が雨具として使っていたと伝われています。竹と無地の和紙で作られ、シンプルながらも頑丈な作りが特徴です。持ち手には太い竹が使用され、しっかりと握れるため扱いやすくなっています。骨組みは太くて丈夫で、骨の数が少ないため、開いたときの形状はシンプルでありながら、重厚感を感じます。また、和紙には油を引いて防水加工が施されているため、雨の日でも問題なく使用できます。
②蛇の目傘(じゃのめがさ)
蛇の目傘は、傘の中央部分と外側で異なる色が使われ、同心円状の模様が特徴です。番傘よりも骨の数が多く、外側の和紙の色柄が美しく、より繊細で華やかな印象を与えます。持ち手には木棒や竹が使用され、藤などで巻かれたデザインのものもあり、細部に工夫が施されています。傘を開くと、太い円が広がり、この模様が蛇の目に見えることから「蛇の目傘」と呼ばれるようになりました。油を引いたものは防水加工が施されており、雨の日でも使用することができます。
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③日傘(ひがさ)

日傘は、雨の日ではなく、日差しを遮るための和傘です。油を引いていないため、和紙本来の色や型染め和紙、友禅和紙の華やかな模様を施し、見た目にも美しいです。和紙は透光性があり、光を柔らかく拡散させるため、直射日光を和らげ、暑さを軽減する効果があります。
④舞傘(まいがさ)
舞傘は、日本舞踊や歌舞伎などの舞台で使用される和傘です。天井部分は絹または和紙で作られ、柄と骨の部分は竹でできています。特に本絹を使用した舞傘は、和紙よりも透明感が高く、非常に美しい仕上がりになります。舞踊において、踊り手は透ける傘越しに相手の動きを見ながら舞うことができ、観客は舞い手を透かして見ることができるようにデザインされています。
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和傘の製造工程。有名な産地はどこ?
和傘の製造工程

和傘は、職人の手仕事によって数週間から数ヶ月かけて、一つひとつ丁寧に作られます。製造工程は非常に複雑で、完成までに30以上もの工程があるといわれています。今回は、その基本的な流れをご紹介します。
- 1. 骨作り:竹を適切な長さに切り出し、細く割って傘骨を作ります。親骨と小骨を丁寧に削り、曲げ加工を施します。
- 2. 柄作り(傘の持ち手を作る ):柄に使用する竹を火であぶり、所定の長さに切り出し、竹の節を削り滑らかに仕上げます。
- 3. ろくろ作り・繰り込み :ろころは持ち手の部分と傘の先端部分に取り付けられ部品。木材から削り出しろくろを2つ作り、持ち手に差し込み、固定します。
- 4. つなぎ:傘骨を1本ずつ糸でろくろに結び付けます。
- 5. 張り:骨組みに和紙や絹を丁寧に張ります。
- 6. 仕上げ(防水加工と装飾):張った和紙や絹を乾燥させた後、油を塗って防水加工を施します。必要に応じて装飾を加え、付属品を取り付けて完成です。
岐阜県や京都府など和傘有名な産地を紹介
岐阜和傘(岐阜県)


岐阜県は和傘の一大産地として知られ、江戸時代から続く長い伝統があります。特に、岐阜市加納地区を中心に生産される「岐阜和傘」は、細身で繊細、そして優美なデザインが特徴です。畳むと細くすっきりと収まり、高度な職人技が表す工芸品です。傘を開くと、内側の骨組みに張られた糸が美しい幾何学模様を生み出し、細部にまでこだわった精巧な作りが際立ちます。こうした繊細で上品な美しさが、岐阜和傘の大きな魅力となっています。「美濃和紙の里会館」で和傘をはじめ和紙の作品を観ることができます。
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京和傘(京都府)
京都は、和傘がいち早く使われるようになった土地です。都の人々の厳しい審美眼のもと、過度な装飾を省き、最高級の素材と技術で仕上げられた上品な和傘が生まれました。京和傘は、京都ならではの洗練されたシンプルな美しさや、侘びた風情を持ち、伝統的な色合いやデザインが受け継がれています。
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金沢和傘(石川県)


明治・大正時代の最盛期には、金沢には118軒もの傘屋があり、「金沢傘」の名で県内外に広く販売されていました。金沢和傘は、金沢周辺に自生する孟宗竹と、五箇山産の楮を使用して作られています。耐久性に優れ、雨や雪の重みに耐えられる丈夫な作りでありながら、美しい仕上がりも兼ね備えているのが特徴です。
現代における和傘の活用
和傘は、日常的に使用されることが少なくなったものの、現代でもさまざまな場面で活用されています。
伝統芸能での活用
歌舞伎や日本舞踊の舞台では、和傘が重要な小道具として使われています。特に「舞傘」は、役者や踊り手の動きに華を添え、舞台演出をより一層引き立てます。
インテリア・装飾としての活用

和傘の美しいデザインは、インテリアや装飾としても人気があります。店舗やホテル、イベント会場などでは、和の雰囲気を演出するアイテムとして和傘が飾られることが増えています。天井から吊るしたり、ライトアップして間接照明として活用したりすることもあります。
撮影小道具としての活用

着物や和装を引き立てる撮影小道具として、和傘は欠かせません。成人式や結婚式の前撮りのほか、近年ではコスプレ撮影のアイテムとしても人気が高まっています。鮮やかな色や繊細な模様が施された和傘は、写真映えするアイテムとして多くの人に愛用されています。
お土産として人気
和傘は、日本ならではの伝統工芸品として、国内外の観光客に人気があります。特に岐阜や京都、金沢などの代表的な産地で作られた和傘は、高い技術力と美しいデザインが魅力です。実用性のある日傘としてだけでなく、装飾用や記念品として購入する人も増えています。
洋傘の普及と現代の傘文化。日傘と雨傘の違いは?

明治時代に入り、西洋文化の広がりとともに洋傘が普及し始めました。洋傘は軽量で耐水性が高く、持ち運びが便利であったため、雨傘として広く使われるようになりました。これにより、和傘の日常的に使用されることが少なくなりました。洋傘の普及は、和傘文化に大きな影響を与えましたが、その後も和傘は伝統的な行事や芸能の場で重要な役割を果たし続けています。
日傘と雨傘の違いは?雨傘は日傘の代わりになる?
日傘と雨傘は一見似ているように見えますが、目的や構造には違いがあります。
- 日傘は、主に強い日差しを遮るためのもので、紫外線を防ぐための素材が使用されることが一般的です。和傘や洋傘においても、日傘は特に軽く、風通しが良くなるように設計されていることが多いです。
- 雨傘は、雨をしっかりと防ぐことを目的としており、耐水性の高い素材で作られています。日傘に比べて、生地が密に作られ、構造も強固なものが多いです。
雨傘の素材は紫外線を防ぐことができないため、日傘の代わりには適していません。 しかし、最近「晴雨兼用傘」が増えてきており、防水加工が施された生地を使用することで、日傘としても雨傘としても使える便利なアイテムが登場しています。
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<参考文献>
・和傘の歴史・京和傘について https://hiyoshiya.wagasa.com/kyowagasa/history/
・和傘とは?歴史や種類、特徴、使い方をご紹介!https://wa-gokoro.jp/traditional-crafts/japanese-umbrella/
・本物の国産和傘の見分け方!日本製と海外製の和傘を比べてみました https://wagasa.shop/blogs/news/comparison-with-wagasa
・ 伝統工芸品館 https://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/?act=detail&id=441&p=21&c=4
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