日本が誇る無形文化遺産!「和紙」の種類と歴史を紐解く

和紙は日本が誇る伝統工芸技術であり、ユネスコ無形文化遺産にも指定されています。その豊富な種類と幅広い用途も世界中から注目を集めつつあります。

本記事では和紙の歴史や種類、そして和紙の製作過程を実際に体験できる場所を紹介します。また、和紙を素材とした高品質な商品をいくつか厳選しておりますので、ご興味のある方はぜひご検討ください!

和紙の歴史

和紙で作った和傘

和紙は古くから日本の美意識や伝統文化に根付いた素材であり、その起源は中国から日本に伝来したとされています。平安時代(794年~1185年)には貴族の間で愛用され、鎌倉時代(1185年~1333年)以降、政治の中心が貴族から武家に移り、武家の世界でも和紙の利用が広がりました。さらに、江戸時代(1603年~1868年)になると庶民にも普及しました。和傘、障子などは和紙から作られています。

近代に入ると洋紙の普及により一時的に衰退しましたが、伝統文化の再評価により再興し、現在では新たな技術やデザインと融合させた製品も生み出されています。また、日本の手漉き和紙技術も2014年にユネスコの無形文化遺産に登録され、国際的に評価されるようになりました。

和紙の特徴は?洋紙とどう違う?

色とりどりの和紙

明治維新以前、日本には外国製の紙が輸入されていなかったため、「和紙」と「洋紙」の区別はなく、需要についても国内生産だけで十分に賄えていました。その後、文明開化等政策の推進に伴い、紙の需要が大幅に増加したため、イギリスなどの西欧諸国から紙を輸入するようになりました。

今ではそれぞれニーズがある和紙と洋紙ですが、いったいどのような違いがあるのでしょうか?両者を比較しやすいように原料、紙質、繊維の特徴、長期保存に対する適性などを下表にまとめました。


原料紙質繊維長期保存量産価格
和紙楮・三椏・雁皮 
表面に凹凸やざらつきあり 
繊維が長く強靭 
適している量産しにくい 
高価
洋紙パルプ 
表面が滑らかで均一 
繊維が短く強度が低い 
変色、変質しやすい
量産しやすい安価

和紙の種類

和紙の種類は非常に多く、厳密に区分すると1000種類以上に及びます。数ある中から「三大和紙」として名を馳せている和紙、そして無形文化遺産に指定されている和紙の魅力について詳しく見ていきましょう。

日本三大和紙

越前和紙
提供:公益社団法人福井県観光連盟

① 越前和紙(福井県

  • 約1500年前から製造されており、最も長い歴史を持つ
  • 日本初の全国通用紙幣「太政官札」は越前和紙で作られていた
  • 証券や卒業証書など正式の用紙として使用されている
  • 抗菌防臭効果のある高機能素材であり、宇宙滞在用被服にも採用されている
美濃和紙

② 美濃和紙(岐阜県

  • 強靭で耐久性がある
  • 「流し漉き」の方法で漉くため、紙面に漉きムラが少ない
  • 岐阜提灯、岐阜和傘など工芸品の材料として使われる
土佐和紙
提供:高知県観光コンベンション協会

③ 土佐和紙(高知県

  • 良質な原料と透明度の高い水に恵まれている
  • 種類が豊富で、現在でも300種類ほど生産を続けている
  • 薄くて丈夫。古文書、美術品など文化財の修復に使用されるものは僅か0.03〜0.05mm

ユネスコの無形文化遺産に登録された和紙

「和紙・日本の手漉き和紙技術」は2014年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。全国に数ある和紙の中で「石州半紙」、「本美濃紙」と「細川紙」の3つが選ばれましたが、共通点として主に以下の3点が挙げられます。

  • 原料は「楮」のみ使用
  • 薬品による漂白が行われないため、時間の経過とともに白くなる
  • 日本固有の「流し漉き」技法を使用

和紙ができるまで

和紙作り

和紙の製造工程は複雑であり地域によって様々ですが、主に原料処理、原料加工、手漉きの三つに分けられます。

① 原料を処理する工程:黒皮の収穫、黒皮取り、皮剥ぎ

楮は11月か12月に収穫され、1.2mに切り揃えられます。樹皮を剥がしやすくするために蒸し、その後一気に剥がします。剥がした黒皮は乾燥させ、15kgの束にして保存します。

暖かくなったら乾燥した皮を水に浸けて柔らかくし、黒皮を除去します。靭皮部は黒皮、青皮、白皮から成り、上質紙の場合は青皮部分もナイフで丁寧に削り取り、白皮は乾燥後冷暗所に保管します。

② 原料を加工する工程:煮熟、ちり取り、打解

煮熟前に楮を水に浸して繊維を柔らかくし、煮熟剤の浸透を良くします。洗浄後、石灰、ソーダ灰、苛性ソーダなどを使った煮熟剤で繊維を煮ます。

煮熟後アクが出るので一日放置し、その後流水に浸し非繊維物質を取り除き、次は手作業でちり取りを行い、傷や変色した部分を除去します。ちり取りされた原料は手作業や機械で叩かれ、束になっている繊維がバラバラに解されます。

③ 紙漉き工程:流し漉き/溜め漉き、圧搾、板張り

流し漉きは「掛け流し」、「調子」、「捨て水」の三工程から成ります。まず浅く水を汲み、繊維を簀全面に均一に広げる「掛け流し」で紙の表面を作ります。次に、やや深く汲み込み、簀桁を動かして繊維を絡める「調子」で厚さを調整します。最後に簀の表面の水を捨てる「捨て水」を行い、紙を伏せて積み重ねます。

一方、溜め漉きは古来の方法で、短く打解された繊維が使用されます。一度だけ原料の入った水を汲み込み、簀桁を揺らして最後まで水が抜けるのを待ちます。乾燥は紙を挟んで重ねたり、板に貼りつけて行います。

湿った紙を重ねた「紙床」を一晩置き、さらに圧搾機で水分を除去します。徐々に強く圧搾し、6時間かけて水分を絞り出すことで、緊縮性のある紙が作れます。

圧搾後の紙は干し板に張り付けて乾燥させます。自然乾燥と強制乾燥では仕上がりが異なり、仕上がった紙は用途に応じて加工が施され、美術素材としても使われます。

日本で和紙作りを体験してみませんか?

小川町

小川町は埼玉県のほぼ中央部に位置しており、町の中央に流れる槻川の恵みを受け和紙や酒造などの伝統産業が盛んな町です。また、古くからの歴史、文化を備えているため「武蔵の小京都」とも呼ばれています。

小川町和紙体験学習センター

【小川町和紙体験学習センター】

1936年に和紙の研究施設として埼玉県が建設した建造物であり、現在では手漉き体験や展示物の見学ができる施設になっています。

こちらで体験できるコースは初心者向けの「入門コース」から4日間に渡る「本格体験コース」まであるので、初めての方はもちろん、上級者の方にも満足していただけます。

  • 住所:〒355-0321 埼玉県比企郡小川町小川226
  • アクセス:東武東上線・JR八高線「小川町駅」下車 徒歩約10分、関越自動車道「嵐山・小川IC」より10分
  • 公式サイト:https://www.town.ogawa.saitama.jp/0000003753.html

東秩父村

東秩父村は埼玉県西部に位置する県内で唯一の村であり、古くから「和紙の里」として知られ、隣接する小川町と共に「細川紙」を生産しています。都内から村までのアクセスは車で約90分、 電車で約110分なので、村の暮らしを堪能しつつ都内まで外出することもできます。

東秩父村和紙の里

【東秩父村和紙の里】

「東秩父村和紙の里」は2016年に「道の駅 和紙の里ひがしちちぶ」としてオープンし、和紙漉き技術を見学、体験できる施設です。農産物&特産品直売所、そば打ち体験工房やフードコートなども併設しているので、お食事やお買い物も楽しめます。

Klookの和紙作り体験・学習ツアー

和紙の産地まで足を運び、現地の歴史と文化に触れるのも楽しみ方の一つですが、都内で気軽に和紙作り体験がしたい方は下記ツアーに参加してみてはいかがでしょうか。

👉【klook】和紙作り体験(浅草)

軽くて丈夫!和紙で作ったバッグ、アクセサリーはいかが?

「和紙」といえば素朴で伝統的な素材というイメージがありますが、近年和紙を使ったアクセサリー、お財布やバッグもおしゃれで環境に優しいアイテムとして人気を集めています。

肌触り、柔軟さといった特徴を残しつつ、特殊コーティングを施すことで水に濡れて破れる心配もないので、「長く使える」という点も魅力です。

和紙ピアス


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SIWAシリーズ


SIWAバッグ

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記録媒体だけでなくあらゆる商品の素材としても優秀な和紙ですが、生活様式の変化に伴い生産量は年々減少し、「後継者不足」という多くの伝統工芸産業が直面する問題も発生しています。和紙文化が今後も末永く後世へ引き継いでいけるように、ぜひ和紙製品の購入や和紙作り体験への参加を通し、その魅力を一度体感してみてください。

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