日本の神話「イザナギ・イザナミ」を分かりやすく紹介!日本の国と神様はいつ生まれた?

イザナギ・イザナミ 日本 神話

日本最古の歴史書であり、神話・伝説・歴史がまとめられた書物『古事記』を、現役の高校教師が分かりやすく紐解くシリーズ記事。第2回となる今回は、神々の中でも特に重要な存在であるイザナギ・イザナミに注目します。イザナギ・イザナミは日本の国と神様を作ったとされる創造神です。彼らがどのように日本を創ったか、その物語を早速ご紹介していきましょう。

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イザナギ・イザナミとは?日本の神による国生み・神生みのストーリー

イザナギ・イザナミ 日本 神話

1. 国生み

古事記は、むかしむかし、この世にまだ何も誕生していない混沌とした場面から始まります。

はじめて天と地が作られ、宇宙を司る、性別を持たない3柱の神が現れました。

さらに今度は、男女のペアの神が10組続けて誕生していきます。

最後に誕生した10組目のペアの神々が、今回のお話の主人公となるイザナギ(男神)とイザナミ(女神)です。

宇宙をつかさどる神はイザナギとイザナミを呼び出し、国づくりを命じます。

「イザナギ、イザナミよ。お前たちは力を合わせて、豊かな国を作りなさい」

そう言うと、1本の鉾(ほこ)を手渡しました。

イザナギとイザナミは高天原から下界に鉾を降ろし、ころころころとかき混ぜると、それが固まり1つの島になりました。名前をオノゴロ島といい、場所は現在の大阪湾のあたりと言われています。

イザナギとイザナミはオノゴロ島へ降り立ち、もっと国を生み出していこうと相談します。

イザナギが言います。

「私の体は成長しているのですが、ひとつ余っている部分があるようです」

イザナミが答えます。

「私の体は成長しているのですが、ひとつ足りない部分があるようです」

それならば、イザナギの余っている部分でイザナミの足りない部分をふさぐことで、国を生んでいくことにしましょう、と話がまとまり、大きな柱の前に立つと、儀式を始めました。

イザナミは柱を右回りに、イザナミは左回りに歩き出すと、柱の向こう側で改めて出会うところから始めます。

イザナミが言います。「ああ、なんと素敵なお方でしょう」

イザナギが答えます。「ああ、なんと美しい女神なのでしょう」

こうして契りを結びましたが、そこに生まれたのは蛭(ひる)のように骨が無い、醜いこどもでした。

どうしてうまくいかなかったのだろうと、宇宙を司る神に相談すると、

「それは、女性のほうから先に声をかけたからです。イザナギのほうから、つまり男性からアプローチしなくてはいけません」とアドバイスを受けました。

言われたとおりにイザナギから声をかけると、今度は見事に国を生むことに成功しました。

淡路島

このようにして誕生した最初の島が、現在の兵庫県淡路島であると言われています。

その後も、四国、隠岐ノ島、九州、壱岐ノ島、対馬、佐渡、本州と続けて生み、これらを総称して「大八嶋国(おおやしまのくに)」と呼ばれました。古来より日本では「八」という数字は末広がりで縁起のよいものとして認識されていますが、これが由来となっているのかもしれません。

2. 神生み

国を生むことに成功したイザナギとイザナミは、次にその土地に暮らす神々を生んでいこうと相談します。そして、大地の神、木の神、山の神、野の神、穀物の神……と誕生させていきました。

しかし、最後に火の神カグツチを生んだ際に、イザナミは身体に大きな火傷を負い、これが原因で亡くなってしまいました。怒ったイザナギは火の神の首を切り落とすと、血がいっせいに飛び散り、そこから雷神が生まれました。イザナギが悲しみの涙を流すと、そこから川の神が生まれました。

イザナギとイザナミは互いに愛し合い、力を合わせて多くの島々と神々を生み出しました。

しかし、最後はイザナミの死によって悲しい別れとなってしまうのです。

国生み・神生みストーリーの注目ポイント

イザナギ・イザナミ 日本 神話

古事記は、何もない混沌とした世界から神がふっと現れては消えていくという不思議な描写から始まります。日本という国がどのようにして誕生したのかが描かれている大切な場面となっています。

国を生んだイザナギとイザナミですが、この時点では二柱は未熟で、試行錯誤する様子が伝わってきます。矛を持って一緒に海をかき混ぜる場面や、柱を互いに逆方向にぐるっと回ってから契りを交わすシーンでは、初々しさを感じ、神様なのに応援したくなってしまうほどです。

イザナギとイザナミが生みだした島々ですが、この順番も大切で、淡路島から始まり、四国、九州、本州と面積が大きくなっていきます。失敗を繰り返しながらも、豊かに成長していく二柱の姿を国の繁栄と重ね合わせ、明るい雰囲気を生んでいるのであるとも言われています。

しかしその後、二柱には悲しい結末が待っていました。火の神の出産が原因となり、イザナミは亡くなってしまいます。ここでは、新しく生命を生み出すことは神聖なものであると同時に、命がけで行われる行為であることを象徴しています。さらに、火は人々に恩恵をもたらす存在である一方で、危険な存在であることも物語っているのです。

さて、この後イザナギは、亡くなったイザナミを黄泉の国まで迎えに行きます。どのような結末が待っているのか、続けてご紹介したいと思います。

イザナギの黄泉の国訪問

1本目でもお話ししたように、古事記には大きく3つの世界が存在しています。

それが高天原(たかまがはら)、葦原中国(あしはらのなかつくに)、黄泉の国(よみのくに)です。高天原は神々が住む天の世界、葦原中国は人々が住む地上の世界、黄泉の国は死者が住む世界です。

次の章では、葦原中国に住むイザナギが、火の神の出産によって亡くなり黄泉の国に行ってしまったイザナミに会いに行く場面から始まります。古事記では、生きている者が黄泉の国へ立ち入ることは許されていません。しかし、最愛の妻を連れ戻すため、イザナギは掟を破って行動に移していくのです。

1. 妻を探しに黄泉の国へ

イザナギは、葦原中国と黄泉の国の境にある黄泉比良坂(よもつひらさか)へたどり着くと、そのまま暗い闇の世界へおそるおそる足を踏み入れていきました。

葦原中国と黄泉の国を隔てている大きな岩を動かし、中に声をかけました。

「イザナミ、迎えに来たよ。一緒に元の世界に戻ろう。そして、また一緒に暮らそう」

イザナミが答えます。

「あなた、迎えにきてくれたのですね。うれしい。しかし……もう遅いのです」

実は古事記では、黄泉の国の食べ物を口にした者は、二度と元の世界に戻ることはできないというルールがあるのです。イザナミはすでに黄泉の国の物を食べてしまったため、どうしても戻ることはできないのだと涙を流しました。

それでも何か方法はあるはずだ、と食い下がるイザナギに対してイザナミが言います。

「わかりました。それでは黄泉の国の支配者にお願いしてきますので、しばらくここで待っていてください」

ただし、ひとつだけ約束してほしい、とイザナミが続けます。

「私が戻ってくるまでは、決してこちらの中をのぞいてはいけません。守ることはできますか?」

イザナギは、「絶対に約束する」と答え、イザナミの帰りを待ちました。

どれくらいの時間がたったのでしょうか。なかなか戻ってこないイザナミにしびれを切らしたイザナギは、ついに約束を破って中をのぞいてしまいます。すると、そこにいたのは……見るも無残に変わり果て、腐敗した体のいたるところにウジ虫がわいている、イザナミの姿があったのです。

「ひゃあ」と思わず悲鳴を上げるイザナギ。これに気づいたイザナミは、「よくも、約束を破りましたね。私にこのような恥ずかしい思いをさせたことを決して許しません」と、イザナギに向かって黄泉の国の軍勢を放ち、捕まえようとしました。

「許してくれえ」と必死に逃げるイザナギ。

黄泉の国の軍勢は、ものすごい勢いで追いかけてきます。

これでもくらえ、とイザナギは持っていた山ぶどうを投げつけると、軍勢たちはそれをがつがつと食べ始めました。

さらに追いかけてくる軍勢に向かって、今度はタケノコを投げつけると、軍勢たちはやはりそれをがつがつと食べ始めます。

イザナミは、黄泉の国の雷の神1500柱を使って、追いかけさせます。

イザナギは必死で逃げながら、目の前にあった桃の木を見つけると、桃の実を1つ手に取り、

「桃の実は神の実、穢(けが)れよ、去れ!」

と叫び、雷の神に向かって投げつけると、これが絶大な効力を発揮し、見事退散させることに成功しました。

しかし、それでもイザナミはあきらめません。

ついにはイザナミ本人が、ドシンドシンと大地を踏み鳴らし、坂を駆け降りて追いかけてきます。

イザナギはあと少しで捕まりそうなところで葦原中国に生還し、巨大な岩で黄泉の国の入り口をふさぐことに成功しました。岩の向こう側から、イザナミが泣き叫ぶ声が聞こえてきます。

2. 日本最初の離婚

イザナギが言います。

「今日限りで、お前とは別れよう。もう夫でもない、妻でもないのだ」

イザナミが答えます。

「そのようなひどいことをおっしゃるのならば、いいでしょう。私はこれから、あなたの世界の者を毎日1000柱ずつ絞め殺します」

イザナギがそれに答えます。

「わかった。それならば私はこちらの世界で、毎日1500柱ずつ赤ん坊を生むことにしよう」

これを最後の会話として、あれほど愛し合っていたイザナギとイザナミは永遠の別れを告げることになったのでした。日本で最初の離婚であるとも言われています。

黄泉の国のストーリーの注目ポイント

イザナギ・イザナミ 日本 神話 桃

時の日本は、中国の進んだ文化を積極的に取り入れようとしていました。特に桃は、中国において神聖な果物とされており、魔除けのアイテムとして登場してきます。また、イザナギが黄泉の国から命がけで逃げる場面では、かつて愛し合った二柱の面影はどこにもありません。女性のプライドを傷つけてしまうことに対する罪の重さが描かれている場面となっています。

最後に二柱が交わした会話では、イザナミが1日1000柱を殺し、イザナギが1500柱を生み出すというやり取りがありました。私たちが住む世界では、生と死が同居していますが、生の数が死の数を上回ることによって、その国は繁栄に向かって進んでいけるはずだという希望と余韻を残しているのです。

日本では「七転び八起き」という言葉があります。七回転んでも八回起き上がっていこうという前向きな姿勢を伝えているように感じます。国が生まれ、神が生まれ、日本の土台が形成されていく中で、これから未来へ向けて成長と発展の期待を感じられるところが、この章の特徴になっています。

イザナギ・イザナミに縁のある日本の場所

上立神岩(かみたてかみいわ)

兵庫県淡路島の南に浮かぶ高さ30mの岩礁。イザナギとイザナミが国生みの儀式の際に周囲を回ったとされる柱とされる。

絵島(えしま)

兵庫県淡路島に接するように浮かぶ島。葦原中国にできた最初の領土であるオノゴロ島の候補のひとつと考えられている。この他にも、大阪湾にはオノゴロ島だったのではないかという島がほかにもいくつか存在している。

黄泉比良坂(よもつひらさか)

島根県松江市東出雲町にある。高天原と葦原中国の境目とされる坂。

火の神を生んだことで亡くなったイザナミを迎えに行ったイザナギが通ったとされる。周辺には、大きな岩が転がっており、黄泉の国をふさいでいた岩と考えられている。

イザナギとイザナミによって、日本と、そこに暮らす神々が誕生していきました。

愛し合った二柱の夫婦は永遠の別れをすることになりますが、これ以降、生と死が同居しながらも少しずつ国が発展していくという余韻を残しつつ、この章は幕を閉じます。次回は、古事記の主役となっていく、太陽神アマテラスと荒ぶる神スサノオが登場し、物語は新たな展開を迎えていきます。

どうぞ引き続きお楽しみ下さい。

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<参考文献>

  • 日本の神話①天岩戸 西野綾子 ひくまの出版
  • 日本の神話②ヤマタノオロチ 西野綾子 ひくまの出版
  • 日本の神話③イナバの白ウサギ 西野綾子 ひくまの出版
  • 日本の神話④地のそこの国 西野綾子 ひくまの出版
  • 日本の神話⑦コノハナサクヤヒメ 西野綾子 ひくまの出版
  • 日本の神話⑩ヤマトタケル 西野綾子 ひくまの出版
  • 図解いちばんやさしい古事記の本 沢辺有司 彩図社
  • 面白いほどよくわかる古事記 かみゆ歴史編集部 西東社
  • 日本の神話 与田凖一 講談社青い鳥文庫
  • 日本の神話 松谷みよ子 のら書店
  • 日本の神様 絵図鑑 2 みぢかにいる神様 ミネルヴァ書房
  • 日本の神様 絵図鑑 3 暮らしを守る神様 ミネルヴァ書房

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