日本を旅行すると、店の前などで「たぬきの置物」を見かけることがある。
「一体これは何のために置いているの?」って思ったことないだろうか?実はこれ、日本の縁起物の一つなのだ。
日本には、古くから「縁起が良いもの」を大切にする習慣があり、「縁起物」を自宅や商店、オフィスに飾ったり、大切な人にギフトとしてプレゼントしたりする習慣がある。
「縁起が良い」とされるものには、食べ物のような形あるものもあれば、風習など形のないものもあるが、今回は、訪日旅行中の観光地でもよく見かける、「置物」について詳しく紹介する。
そもそも縁起とは何ですか?
「縁起」という言葉は本来、サンスクリット語の「pratītya-samutpāda」、「すべてのものには、必ずそれを生んだ因と縁がある」という意味で、日本語では「因縁生起」といい、それを略して「縁起」と言われるようになった。
現代では「縁起が良い」や「縁起が悪い」などの表現でよく使われて、「良い(悪い)出来事が起こることを予感させる要素があるさま」という意味だ。
縁起が良い置物4選
日本では縁起を祝い祈るための「縁起物」を贈る習慣があり、贈り品には様々な種類がある。ここからは、なかでも贈り物の定番「置物」をいくつかピックアップしてご紹介!
お客さんや金運などを招く縁起物:招き猫
「招き猫」は商売繁盛で定番の縁起物。最近は外国人観光客からも「Lucky cat」や「Welcome cat」と呼ばれてお土産として人気だ。
縁起物されるようになった由来は諸説あるが、その中でも有名なのは東京・豪徳寺に伝わる逸話だ。ある日、彦根藩主の井伊直孝が鷹狩り帰りに豪徳寺の前を通りがかった際、猫に手招きされたため寺の境内立ち寄ることにした。寺で過ごしていると、突然雷雨が降ってきたが、ネコのおかげで雨に濡れずに済み、和尚との話も楽しめたため、以降殿様は猫を大事にした。その後、豪德寺では、福を招いた猫を「招福猫児(まねきねこ)」と呼び、お祀りする招福殿も建てられた。
招き猫の形も様々で、それぞれの御利益も異なる。
- 右手挙げは「金運」、左手挙げは「人」を招く、が基本
※両手あげの商品もあるが、「お手上げ」を意味し、縁起が悪いといわれることも - 「小判」を持つことが多いが、他に鯛・小槌・熊手などを持つものもある。
- 近年では、時代の変化を反映して「恋愛」「長寿」「宝くじ大当たり」などさまざまな御利益のものも存在する。
- 色もそれぞれの意味・御利益があるようだ。
- 例:
- 金・黄:金運上昇
- 三毛:運を呼ぶ
- 黒:魔除け、厄除け、家内安全
全国各地には招き猫にまつわる有名スポットがたくさんある。誕生説の舞台とされる豪徳寺は、境内はもちろん周辺の商店街でもたくさんの招き猫と出会うことができる。愛知県も、常滑市には有名な「とこなめ招き猫通り」、瀬戸市には「招き猫ミュージアム」があるので、様々な招き猫体験できるよ。
玄関先によく見かける商売繁盛の縁起物:狸
「狸の置物」も商売繁盛の縁起物として、日本ではお店の前や玄関先に見かけることが多い。そして、新店オープンの贈り物として人気だ。
置物としての始まりは、本家たぬき製陶所(現「狸庵」(りあん))の藤原銕造(ふじわらてつぞう)が作った狸の置物だといわれる。さらに、昭和26年、昭和天皇が信楽に行幸され、歌を詠まれたことで、全国的に有名になったという。
また、信楽焼の狸の置物の姿や持ち物では、「八相縁起(はっそうえんぎ)」という8つの縁起の意味が表現されている。
- 笠:普段からの備え、思いがけない災難から身を守る
- 大きな目:周囲を見渡し、気を配ることで、正しい判断ができる
- 笑顔:お互いに愛想よくいることで商売が繁盛する
- 徳利:人徳を持てるよう努める
- 通い帳:信用第一
- 大きなお腹:冷静さと大胆さを持ち合わせる
- 金袋:ずばり!金運
- 太いしっぽ:何事もしっかりした終わりを!
狸の置物と出会える場所は、滋賀県甲賀市信楽町や、京都府嵐山の嵯峨野トロッコ列車の保津峡駅など。是非記念写真を撮ってみてね!
魔除け、病気や災難を防ぐ縁起物:だるま
倒してもすぐ起き上がるように作られていることから「七転び八起き」の対象や、商売繁盛・開運出世などの縁起物として知られる「だるま」。そのモデルはインド出身の仏教僧「達磨大師」と言われている。
達磨大師は、今から1600年ほど前に南インドのカンチープラム(香至国)で生まれ、出家し「菩提達磨」(ぼだいだるま)の僧名で修行。のちに中国へ渡り禅宗の基礎を築いたとされる人物。
「縁起だるま」発祥の地は群馬県高崎市にある「少林山達磨寺」で、この達磨寺の東嶽和尚が飢饉に苦しむ農民山縣友五郎にだるま作りを伝授したことが由来といわれている。
高崎だるまの特徴は「眉毛は鶴、鼻から口ヒゲは亀」という吉祥・長寿のシンボルとして縁起の良い二種類の動物をお顔に表現している点。
だるまが赤く塗られる理由には諸説あり、モデルとなった達磨大使や高僧が緋色の法衣を身に着けていたからや、「魔除け」の意味が込められているから、などとされている。さらに、自分でだるまの目を描き入れることは「心の目の開眼を表現した」ことだという。
日本のだるまをおみやげで買いたい場合は、達磨信仰発祥の地とされる奈良県の「片岡山達磨寺」と群馬県高崎市の周辺のおみやげもの屋さんをチェック!また、他にも東京からアクセスしやすい川崎大師の仲見世などにも、だるま専門店があるのでぜひのぞいてみてね!
子宝祈願、子供の健康と成長を祝う縁起物:こけし
「こけし」とは伝統工芸品の木製人形のことで、子宝祈願や子供の成長祈願の縁起物。
江戸時代末のころ、東北地方の温泉地で、湯治客のお土産物として作られたものが由来とされている。こけしの名前の由来は、鳴子温泉で1940年「東京こけし会鳴子大会」が開催された際に、こけし工人・関係者が集まり「こけし」とひらがな三文字に統一されたそう。
遠刈田、鳴子、土湯温泉の3地域が「三大こけし発祥地」として知られており、地域ごとに受け継がれる形や模様、技法などが異なる。
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