日本を旅行していると、お土産のパッケージや着物の柄、神社の建物などに、繰り返し使われている特定の「デザイン」や「キャラクター」があることに気づきませんか?
例えば、動物の「鶴」や「亀」、植物の「松」など。これらはすべて、日本で「縁起物」と呼ばれる幸運のシンボルです。神社やお寺などで授与されるお守りや熊手のような幸運を招くためのアイテムも、実はこれら個別のラッキーモチーフを組み合わせて作られているのです。
今回は、日本文化の中に隠れている代表的な「縁起の良いモチーフ」を25種類、厳選してご紹介します。それぞれの意味を知っていれば、お土産屋さんなどで素敵なメッセージが込められた逸品を見つけられるはずです!
そもそも縁起とは?意味と現代における位置づけ
「縁起(えんぎ)」という言葉は、もともと仏教用語(サンスクリット語の「pratītya-samutpāda」)に由来し、「すべての物事には必ず原因と結果がある」という意味でした。それを日本語では「因縁生起」といい、略して「縁起」と言われるようになったのです。
現代の日本において「縁起が良い」とは、「良いことが起こる予兆がある」「運気が良い」という意味で広く使われています。
日本を訪れる外国人観光客の多くは、タヌキや招き猫を見て「かわいいデコレーション」「面白いお土産」だと感じます。しかし、日本の「縁起物」は単なる飾りではありません。これらは、古くから人々の幸せを願う気持ちや信仰が形になったものです。
一つひとつの縁起物には、「金運」「健康」「長寿」「商売繁盛」など、特定のパワーや願いが込められています。その意味を知ることで、日本文化への理解がより深まるでしょう。
日本の4大定番・縁起キャラクター
まずは、置物や人形でよく見かける、日本を代表する4つのマスコット的モチーフをご紹介します。
1. タヌキ|商売繁盛
日本のレストランや居酒屋の前でよく見かける、お腹の大きなタヌキの置物。「信楽焼(しがらきやき)」という陶器で作られているこの置物は、「タヌキ」という名前の響きが「他を抜く(たをぬく)=ライバルに勝つ」に通じることから、商売繁盛や出世、勝負事に勝つための縁起物とされています。
現在よく知られているタヌキの置物は、滋賀県のたぬき家総本家「狸庵(りあん)」の藤原銕造(ふじわらてつぞう)が作った狸の置物だといわれています。さらに昭和26年(1951年)、昭和天皇が信楽に行幸された際、歌を詠まれたことで、全国的に有名になったそうです。
また、信楽焼の狸の置物の姿や持ち物では、「八相縁起(はっそうえんぎ)」という8つの縁起の意味が表現されています。
- 笠:普段からの備え、思いがけない災難から身を守る
- 大きな目:周囲を見渡し、気を配ることで、正しい判断ができる
- 笑顔:お互いに愛想よくいることで商売が繁盛する
- 徳利(お酒):人徳を持てるよう努める
- 通い帳:信用第一
- 大きなお腹:冷静さと大胆さを持ち合わせる
- 金袋:ずばり!金運アップ
- 太いしっぽ:物事の終わりをしっかり締める
たくさんのタヌキの置物と出会える観光スポットとして、滋賀県甲賀市信楽町や、京都府嵐山の嵯峨野トロッコ列車の保津峡駅などもおすすめです。是非記念写真を撮ってみてくださいね!
2. 招き猫|幸運を招く
「招き猫」は商売繁盛の願いが込められた定番の縁起物。最近は外国人観光客からも「Lucky cat」や「Welcome cat」と呼ばれてお土産としても人気です。
縁起物とされるようになった由来は諸説ありますが、その中でも有名なのは東京・豪徳寺(ごうとくじ)に伝わる逸話です。江戸時代、彦根(現在の滋賀県)藩主・井伊直孝(ひこねはんしゅ・いいなおたか)が鷹狩りの帰りに豪徳寺の前を通りがかった際、猫に手招きされたため寺の境内に立ち寄ることにしました。寺で過ごしていると、突然雷雨が降ってきましたが、ネコのおかげで雨に濡れずに済み、和尚との話も楽しめたため、以降殿様は猫を大事にしたそうです。その後、豪德寺では、福を招いた猫を「招福猫児(まねきねこ)」と呼び、お祀りする招福殿も建てられました。
招き猫の形も様々で、それぞれの御利益も異なります。
- 右手挙げは「金運」、左手挙げは「人」を招く、が基本
※両手あげの商品もあるが、「お手上げ」を意味し、縁起が悪いといわれることも - 「小判」を持つことが多いが、他に鯛・小槌・熊手などの縁起物を持つものもある。
- 近年では、時代の変化を反映して「恋愛」「長寿」「宝くじ大当たり」などさまざまな御利益のものも存在する。
- 色もそれぞれの意味・御利益があるといわれている。
- 例:
- 金・黄:金運アップ
- 三毛:運を呼ぶ
- 黒:魔除け、厄除け、家内安全
全国各地には招き猫にまつわる有名スポットがたくさんあります。誕生説の舞台とされる豪徳寺は、境内はもちろん周辺の商店街でもたくさんの招き猫と出会うことができます。愛知県も、常滑市(とこなめし)には有名な「とこなめ招き猫通り」、瀬戸市には「招き猫ミュージアム」があるので、是非訪れてみてください。
3. だるま|転んでも起き上がる不屈の精神
倒してもすぐ起き上がるように作られていることから「七転び八起き(7回転んでも8回起き上がる)」という日本のことわざの由来とされ、商売繁盛・開運出世などの縁起物として知られる「だるま」。そのモデルはインド出身の仏教僧「達磨大師(だるまだいし)」といわれています。
達磨大師は、今から1600年ほど前に南インドのカンチープラム(香至国)で生まれ、出家し「菩提達磨(ぼだいだるま)」の僧名で修行。のちに中国へ渡り禅宗の基礎を築いたとされる人物です。
「縁起だるま」発祥の地は群馬県高崎市にある「少林山達磨寺」で、この達磨寺の東嶽和尚(とうがくおしょう)が飢饉に苦しむ農民・山縣友五郎(やまがけともごろう)にだるま作りを伝授したことが由来といわれています。
高崎だるまの特徴は「眉毛は鶴、鼻から口ヒゲは亀」という吉祥・長寿のシンボルとして縁起の良い二種類の動物を顔に表現している点。
だるまが赤く塗られる理由には諸説あり、モデルとなった達磨大使や高僧が緋色の法衣を身に着けていたから、あるいは「魔除け」の意味が込められているから、などとされています。
日本のだるまをおみやげで買いたい場合は、達磨信仰発祥の地とされる奈良県の「片岡山達磨寺」や群馬県高崎市の周辺のおみやげもの屋さんをチェック!また、他にも東京からアクセスしやすい川崎大師の仲見世などにも、だるま専門店があるのでぜひのぞいてみてください。
👉だるまの色や意味は?正しい目入れの方法とは?関連記事で「だるま」についてもっと知ろう
4. こけし|子どもの健康と成長を願う
「こけし」とは伝統工芸品の木製人形のことで、子宝祈願や子どもの成長祈願の縁起物です。
江戸時代末のころ、東北地方の温泉地で、湯治客のお土産物として作られたものが由来とされています。こけしの名前の由来は、宮城県の鳴子温泉で1940年「東京こけし会鳴子大会」が開催された際に、こけし工人・関係者が集まり「こけし」とひらがな三文字に統一されたそう。
遠刈田、鳴子、土湯温泉の3地域が「三大こけし発祥地」として知られており、地域ごとに受け継がれる形や模様、技法などが異なります。
🎎「伝統こけし」は高い?安い?価格帯を確認する(Yahoo! ショッピング)
幸運を呼ぶ「生き物」のモチーフ
日本でも、特定の生き物を神様の使いや、幸福を運んでくる特別な存在として尊ぶ文化が根付いています。その生き物の特徴や習性にあやかるだけでなく、「語呂合わせ」といって、その生き物の名前の響きに願いを重ね合わせているのも、日本文化の大きな特徴のひとつです。
5. 鶴と亀|長寿
「鶴は千年、亀は万年」という日本のことわざがある通り、長寿と夫婦円満の象徴です。結婚式の着物の柄や、お祝いごとの贈り物によく使われます。
6. 干支|その年の守り神
日本を含むアジアの多くの国々には、12種類の動物が1年ごとのサイクルで回る「十二支」の文化があります。日本では、その年の動物を「干支(えと)」と呼び、新年にその干支の置物を玄関や床の間に飾る習慣があります。
干支の置物を飾ることで、新年に訪れる年神様(その年の幸福をもたらす神様)を歓迎し、家内安全や商売繁盛、五穀豊穣を祈願します。また、自分自身の干支や、その年の干支のモチーフを身につけると、厄除けになると言われています。
干支の置物は、新年を祝う「お正月飾り」としても、日本で最も一般的な縁起物のひとつです。
👉日本とアジア各国とでは十二支の動物が異なる?関連記事で「干支」についてもっと知ろう
7. 鯛|お祝い・祝福
魚のタイは、「めでたい」という言葉に通じることから、お祝いや幸運のシンボルとして使われます。七福神の恵比寿様が抱えていることでも有名です。
👉恵比須様が主役のお祭り?「えびす講」とは?いつ開催される?
8. 鯉|立身出世
鯉は川の流れに逆らって泳ぎます。中国の黄河上流にある竜門という急流を登りきった鯉は竜になるという「登竜門」の伝説から、鯉は困難を乗り越えて成功する出世や成長のシンボルです。
また、日本では5月5日を男の子の健康と成長を願う伝統行事「端午の節句(たんごのせっく)」とされており、まさに立身出世の願いを込めて鯉のぼりを飾る習慣があります。
👉5月5日「こどもの日」のお祝い「端午の節句」とは?詳しく解説
9. カエル|無事帰る・復活
「カエル」という発音が「帰る」や「返る」と同じため、旅から無事に帰る(交通安全)や、使ったお金が戻ってくる(金運)などの意味があります。
日本家屋では庭先に陶器のカエルの置物が置かれていることがしばしばあります。
10. フクロウ|開運・知恵
「不苦労(ふ・くろう)=苦労しない」や「福来郎=福が来る」という当て字から、開運招福の象徴です。
フクロウは首がよく回ることから「お金に困らない」という金運の意味もあります。日本では、借金や支払いなどで経済的に苦しく、やりくりがつかない状態を表す慣用句として「首が回らない」という表現を使うためです。
11. ウサギ|飛躍・ツキを呼ぶ
後ろ足でぴょんぴょんと飛び跳ねる姿から、飛躍や向上心の象徴です。また、日本では幸運のことを「ツキ」とも言いますが、月にウサギが住んでいるという伝説から、「ツキ(月=運)」を呼ぶ動物ともいわれることも。
ウサギは十二支の中に入っていることや、神話「因幡の白兎」にも登場することから、古来より日本人にとって身近な存在だったことがうかがえます。
12. トンボ|勝負運
トンボは前にしか進まず、決して退かない(後ろ向きに飛ばない)習性があることから、古くは「勝ち虫」と呼ばれ、侍の兜や武具の柄として好まれました。現代でも勝負運のシンボルです。
13. 龍|運気上昇
空へ力強く昇っていく姿から、運気上昇、権力、守護の強烈なパワーを持つとされています。神社仏閣の天井画や彫刻によく見られるモチーフです。
龍も十二支の中に入っています。
日本の美しい風景と生命力を象徴する「自然・植物」モチーフ
自然の中で生き抜く植物の生命力にも、日本人は古くから特別な力を感じてきました。伝統工芸品の柄や、日常のデザインによく使われるモチーフです。
14. 富士山|日本一・末広がり
その雄大な姿は「日本一」の象徴。また、山頂から裾野にかけて広がる形も、「末広がり」といって未来が良くなることを意味します。
また、お正月には「一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)」と言われ、年が明けて最初に見る初夢で富士山、鷹、茄子のいずれかが登場すると縁起が良いといわれています。
15. 松竹梅|忍耐・生命力
「松」「竹」「梅」の3つセットのモチーフです。「松竹梅(しょうちくばい)」とひとまとまりで言われます。また、松、竹、梅の順にランクが付けられる場合もあります。
- 松: 冬でも緑を保つ(不老長寿)
- 竹: まっすぐ伸びて折れない(成長・生命力)
- 梅: 春に先駆けて花を咲かせる(気高さ・開運)
16. 瓢箪(ひょうたん)|無病息災・魔除け
ひょうたんはツルが伸びて果実がたくさんなることから、繁栄の象徴です。また、6つのひょうたん(六瓢=無病=むびょう)で「無病息災=健康」のお守りモチーフとしてよく使われます。
また、くびれた形は魔物を吸い込むとも言われ、魔除けの意味もあります。
17. 珊瑚|長寿・安産
宝石としても大切にされてきた珊瑚は、その成長の遅さと美しさから「長寿」の象徴です。また「産後(さんご)」の語呂合わせから、安産祈願のモチーフとしても人気があります。宝船(後述)や宝箱などに描かれているのもよく見られます。
伝説の宝から日常の道具まで!幸運をたぐり寄せる「宝物・道具」のモチーフ
日本人が古くから使ってきた暮らしの道具や、富の象徴をモチーフにした縁起物は、現代でも商売繁盛や家内安全を願う人々の間で、最も身近なラッキーアイテムとして愛され続けています。
18. 打ち出の小槌|富・願いが叶う
振れば欲しいものが何でも出てくるという伝説のハンマー。昔話の「一寸法師(いっすんぼうし)」や、七福神の大黒天が持っていることで有名です。金運や開運のシンボルとして、キーホルダーなどのデザインによく使われます。
👉「一寸法師」ってどんな話?桃太郎など日本の定番の昔話を15選ご紹介!
19. 七福神|7つの幸福
七福神とは、恵比寿(えびす)、大黒天(だいこくてん)、毘沙門天(びしゃもんてん)、弁財天(べんざいてん)、布袋尊(ほていそん)、福禄寿(ふくろくじゅ)、寿老人(じゅろうじん)の七柱の神様の総称。富、長寿、子孫繁栄など、多様な幸福を運んできます。
七柱全員が乗っている「宝船」の絵は、たくさんの幸福を一度に運んでくる最強のラッキーモチーフです。
20. おかめ・ひょっとこ|笑い・円満
伝統的なお面です。ふくよかな女性の「おかめ」と、口をすぼめた男性の「ひょっとこ」。ユニークな顔は見る人を笑わせ、日本のことわざにもある「笑う門には福来たる」を体現する、夫婦円満や家内安全のシンボルです。
21. 扇|繁栄・発展
開いた時の形が裾に向かって広がる「末広がり」を表すため、未来の発展や繁栄の象徴とされます。お祝い事の贈答品にも使われる縁起の良い形です。
22. 小判|金運・財運
江戸時代の通貨である「小判」は、見た目通り「金運」の象徴です。招き猫が持っていたり、お守りのデザインになっていたり様々。ストレートに「お金が貯まりますように」という願いが込められています。
23. 米俵|食に困らない・豊かさ
お米を詰めた俵は、五穀豊穣(ごこくほうじょう)と、一生食べ物に困らない「富」の象徴です。七福神の大黒天がこの米俵の上に乗っている姿や、宝船、宝箱の中身として描かれているのもよく見かけます。
24. 独楽|物事が円滑に回る
昔の子どももおもちゃである独楽(こま)が勢いよく、かつ安定して回る様子から、「仕事や物事が円滑に回る」「お金の回りが良くなる」という意味があります。また「独り立ち(自立)」という意味も含み、子どもへのプレゼントにも選ばれることも。
25. 羽子板|厄を跳ね返す
お正月の遊び「羽根つき」の道具です。羽根つきは、木製のラケット「羽子板(はごいた)」でおもりの付いた羽根を打ち合う、バドミントンに似た日本の伝統的な遊び。
羽子板には悪いものを「跳ね飛ばす」という意味があり、特に女の子の健やかな成長を願うモチーフとして、伝統工芸品や正月の装飾によく使われます。
👉独楽や羽根つきなど日本の伝統的な子どもの遊びを30選ご紹介!
まとめ:モチーフの意味を知って、日本のお土産選びを楽しもう
日本の縁起物は、そこに描かれた「モチーフ」一つひとつに物語と願いが込められています。
例えば、ビジネスをしている友人には「昇り龍」や「富士山」、「打ち出の小槌」などの柄が入ったものを、結婚する友人には「鶴亀」や「松竹梅」のデザインを。 モチーフの意味を知っていれば、相手の幸せを願う気持ちを込めた、より特別なギフト選びができるはずです。ぜひ次回のお買い物の参考にしてくださいね!
Comments