
日本の伝統的工芸品の木工品と並ぶ竹工品は、竹を主な原料とした工芸品です。日本では木工品同様、古くから竹が活用されてきました。たとえば、日常生活に使用するものや農業に使用するもの、茶道や華道の道具などさまざま。当記事ではそんな竹工品について、歴史や今も受け継がれている数々の工芸品などを紹介します。日本で独自に進化した技術や歴史とともに歩んできた竹工品の世界を堪能してください。
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日本の「竹工品」:歴史と定義

竹を使用した伝統的な工芸品を「竹工品」といいます。日本では古来、素材となる竹に恵まれ、多くの竹製品が作られてきました。古いものでは、縄文時代の遺跡から出土しているものもあります。そんな竹工品の技術が進歩したのは、唐から技術が導入された奈良時代。その後、茶道や華道など時代とともに日本独自の進化を遂げます。
その技法は、竹の性質を活かしたものばかり。たとえば、縦方向に割りやすいため、細く削った竹ひごで編み込んだり、弾力性に富みしなりやすく折れにくい性質を活かして釣り竿や弓を作ったり。竹工品は、美しさと実用性を兼ね備えた工芸品として現在に受け継がれています。
さまざまな竹工品:竹細工
勝山竹細工 (岡山県)
勝山竹細工は、岡山県真庭市で受け継がれる、材料にマダケを使用した伝統的な竹工芸です。その起源は19世紀の初頭。実用性を重視した製品づくりが特徴です。代表的な製品に「そうけ※1」や「めしぞうけ※2」、「みぞうけ※3」、「米あげぞうけ※4」などがあり、素朴ながら存在感があるデザインが魅力。竹の持つ風合いが和洋どちらの食卓にも調和し、花器や壁掛けなど、さまざまな場所やシーンで活用できるのも特徴です。丈夫で長く使えることから、現代の暮らしにもなじむ魅力を持っています。
※1:日常生活や農作業で使用していた竹で編んだざる
※2:炊いた米が腐敗しないように軒先に吊るして使用したざる
※3:野菜を運ぶためのかご
※4:洗米後の水切り用のざる
別府竹細工(大分県)

別府竹細工は、室町時代に行商用の籠作りから始まり、江戸時代には大分県の別府温泉の発展とともに、温泉客が使う台所用品として広まりました。明治後期には「別府工業徒弟学校竹籃科」が設立され、技術の発展が加速し、現在にいたります。主な素材は大分県産のマダケで、用途に応じてハチクやクロチクなども使用。八つの基礎技法を基に400種類以上の編み組みパターンが存在し、竹のしなやかさと強度を活かした美しいデザインが特徴です。また、手作業ならではの繊細な編み目が魅力であり、茶器や花器などの工芸品としての価値も高く評価されています。土産物としての人気も高く、現在も大分県を代表する地場産業のひとつとして受け継がれている工芸品です。
駿河竹千筋細工 (静岡県)
主にニガタケやモウソウチクを使用する駿河竹千筋細工。19世紀中頃、竹細工の技をもつ岡崎藩の藩士が駿河を訪れた際、その技法が伝えられました。「丸ひご」といわれる細く長く削られた竹の棒を竹の輪に編み込んで、花器や盛籠、茶托などさまざまな形の工芸品が生み出されます。ちなみに、使用される丸ひごの細さを表した言葉が駿河竹千筋細工にもある「千筋」。約90cmの畳の幅に1000本並べられるほど細い竹ひごが使われているという意味です。作業はひご作りから組み立てまで、ほぼ一人の職人が手掛けます。独特の軽やかさと優雅な曲線美が魅力で、日本の竹工芸の精巧さを象徴する存在のひとつです。
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さまざまな竹工品:釣り竿
江戸和竿(東京都)
江戸和竿は、江戸時代中期に誕生し、後期には美術工芸の域に達した竹製の釣竿です。江戸前の海や河川での釣り文化が発展する中、釣り人の多様な要望に応える形で進化しました。その特徴は、釣る魚や釣り場に応じた使いやすさと、漆塗りによる美しい仕上がりです。材料にはホテイタケ、ハチク、ヤダケ、マダケなどの日本の天然竹が使われ、職人が厳選した竹を数年乾燥させて加工します。矯め(曲げ直し)、継ぎ、糸巻き、塗りといった工程を経て、一つひとつ丁寧に仕上げられます。実用性と美しさを兼ね備えた江戸和竿は、単なる釣具を超え、日本の職人技が光る工芸品としての価値も高く評価されています。
紀州へら竿(和歌山県)

紀州へら竿は、へら鮒釣り専用の竹製釣り竿で、製造する際に高度な職人技が必要な伝統的工芸品です。1870~80年代に製造技法が確立したのは大阪市ですが、発展したのは原材料の高野竹(スズ竹)の産地に近い和歌山県橋本市でした。そんな紀州へら竿が全国的に広まるきっかけになったのが、昭和初期のへら鮒釣りブーム。以降、多くの釣り師に愛用されています。
そんな紀州へら竿の特徴は、約90cmの竹を3~5本繋ぎ、先端は円錐状に削られ、持ち手は太めに設計されている点。製造工程は12にも及び、竹の乾燥から漆塗りまで、すべてが手作業で行われます。職人が一本一本丁寧に仕上げられた釣り竿です。
さまざまな竹工品:傘や器、弓など
岐阜和傘(岐阜県)

江戸時代は、収入の低い下級武士がたくさんいました。その下級武士の内職のひとつだった伝統工芸品が岐阜和傘です。また、岐阜市を流れる長良川流域で和紙が作られ、竹や荏胡麻油といった良質な材料が豊富だったことから、江戸時代以降も和傘の産地として発展していきました。そんな岐阜和傘の特徴のひとつが、細物」と呼ばれる、畳んだ際に細く美しく収まる構造。製作は分業制で行われ、竹骨を糸で結び、和紙を貼った後、油引きや塗装、天日干しを経て完成します。雨傘や日傘のほか、舞踏傘や野点傘など用途に応じた多彩なデザインも魅力。機能性と美しさを兼ね備えた伝統工芸品です。
大阪金剛簾 (大阪府)
大阪金剛簾は、平安時代に宮中で間仕切りや飾りとして使われた御簾(みす)を起源とした大阪府富田林市周辺で発展した伝統工芸品です。ちなみに御簾は、世界最古の長編小説「源氏物語」にも描かれていました。原料は、大阪と奈良の府県境にある金剛山 麓に自生する真竹。その良質な真竹で竹ひごを作り、編み上げ、仕上げるという工程を経て作られます。竹の自然な風合いがあり、和の空間を演出する美しさだけでなく、室内の間仕切りや日よけとして実用性も兼ね備えた工芸品です。
高山茶筌 (奈良県)
奈良県生駒市で作られている高山茶筌。室町時代中期に鷹山城主の子息が茶道の創始者・村田珠光の依頼で作り上げたのが始まりです。その製法は、城主一族の秘伝として受け継がれましたが、後に16名の家来へ伝えられ、奈良県生駒市の高山が全国唯一の産地となりました。ちなみに茶筌とは、茶道でお茶をたてる際に使われる茶道具のひとつです。そんな高山茶筌には、120種類以上の茶筌があり、流派や用途ごとに形状や穂の数が異なります。製造はすべて手作業で行われ、繊細な技術が生み出す茶筌の形状や削り具合により、お茶の味わいが微妙に変化するのが特徴です。
都城大弓 (宮崎県)
宮崎県都城市周辺で作られている都城大弓。江戸時代から盛んに生産されてきた伝統的な竹弓です。原料は都城のマダケとハゼ。工程は200以上あり、弓師といわれる職人が手作業により一人で作り上げます。昭和初期には東アジアにも販路が拡大し、大産地となった後、一時低迷期があったものの、現在でも日本唯一の産地として竹弓の9割を生産。精巧な職人技が生み出す都城大弓は、伝統の技と美しさを兼ね備えた日本の弓道文化を象徴する逸品です。
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