日本のスクールカーストと部活文化。見えない学生たちのヒエラルキー【日本の学校】

  • Mar 14, 2025
  • Yumi


日本の学校には、「スクールカースト」と呼ばれる生徒間の見えないヒエラルキーが存在すると言われています。部活動や成績、見た目、性格などさまざまな要素によって、無意識のうちに生徒たちはグループ化され、それぞれの「立ち位置」が決まっていきます。しかし、スクールカーストのルールは明確に決まっているわけではなく、時代や環境によっても変化しています。
今回は、日本のスクールカーストの実態や、部活文化との関係、また海外との違いなどについて詳しく解説します。

日本のスクールカーストとは

スクールカースト

スクールカーストとは、学校での生徒間の上下関係の階層(カースト)構造のことです。人気度や運動能力、容姿などが主に要因となり、上位グループと下位グループができていきます。中学校や高校で発生することが多く、同い年の子どもたちが、学校という閉鎖的な世界の中でお互いがお互いを値踏みし、ランク付けすることで生まれるものなのです。上位から順に「1軍、2軍、3軍」と呼ばれるのが一般的で、最近はスクールカーストがいじめや不登校の原因になるとも指摘されています。

カーストが生まれる背景や特徴

序列を決める要素は「容姿」と「コミュニケーション能力」

スクールカーストが生まれる背景にはどのようなことがあるのでしょうか。「『スクールカースト』の序列を決めるものは何だと思いますか?」というアンケート(オウチーノ総研による調査、対象は首都圏在住の20歳~39歳の男女860人)の結果を抜粋してご紹介します。

左から、コミュニケーション能力、容姿、運動神経、学業の成績、部活動、異性関係、家柄・親の職業、センス、住んでいる家、趣味、その他。棒グラフの青が男性、赤が女性。出典:オウチーノ総研「『学生生活』に関するアンケート調査」(n=490)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000123.000014097.html

男女別では、結果に若干の違いがありました。男子の序列を決める要因は「コミュニケーション能力」が最も多く50.2%、次いで「容姿」が37.2%、「運動神経」が32.9%、「学業の成績」が30.4%、「部活動」が26.6%でした。
女子の場合は「容姿」が49.5%と最も多く、「コミュニケーション能力」が43.9%、「運動神経」が25.0%、「学業の成績」が24.1%、「異性関係」が22.2%でした。
男子では「コミュニケーション能力」、女子では「容姿」が優れている生徒がカースト上位に位置することが多いようですね。
また、男女全体でみると「コミュニケーション能力」が47.0%で最も多かったようです。続いて「容姿」が43.7%、「運動神経」が28.9%、「学業の成績」が27.2%、「部活動」が22.9%となりました。

スクールカースト上位と下位の特徴

次に、「教室内(スクール)カースト」(鈴木翔・光文社新書)を参照し、カースト上位と下位の特徴を見てみましょう。カースト上位の生徒の特徴は、「にぎやかで声が大きい」「遠足のバスで後ろの席を占領する」「気が強く、仕切り屋」「異性の評価が高い」「若者文化へのコミットメントが高い」「女子は容姿に気を遣う」「男子は運動ができるイケメン」などが挙げられています。一方、カースト下位の生徒の特徴は、「特徴はない。しいて言えば地味」「おとなしい」「いつもクラスで静かにしている」とし、上位グループの生徒と比べるとあまり強い特徴がないとされています。

部活が生徒のイメージを決める?

現役高校生による「イケてる部活動」ランキング結果

部活動

日本では、かつては中学校での部活動参加が必須とされていたこともあり、部活動が盛んな学校が多いです。ほぼ全員が何かしらの部活動に所属していることになるので、部活動ごとに、似たようなタイプの生徒が集まる傾向にあるのは自然なことかもしれません。
そのような背景から、所属している部活動がカーストの序列に影響してくることも多いようです。例えば、運動部には活発で目立つタイプの生徒が多く、文化部には落ち着いた性格の生徒が多いというような大まかなイメージがあります。端的に言えば、運動部がカーストの上位に来ることがあり、文化部はカーストの下位に来ることが多いのかもしれません。

実際のデータを見てみましょう。高校生に聞いた「イケてる部活動TOP5」(スタディサプリによる調査)の結果はこちら。
ちなみに、イケている、イケていないというイメージに明確な基準はありません。もちろん、学校や学年によって状況は異なるものなので、参考程度に見てみてくださいね。

イケてる部活動TOP5

 順位部活動割合
1位サッカー30.7%
2位  バスケットボール19.3%
3位ダンス 16.1%
4位 野球(硬式)13.3%
5位吹奏楽・バレーボール13.0%

出典:株式会社リクルート「スタディサプリ進路」『イケてる部活ランキング』(n=690。2023年5月)https://shingakunet.com/journal/fromsapuri/20230420000006/?vos=scrmot00054

運動部の中でも、サッカーやバスケットボール、野球などの大衆スポーツは上位にあがるようですね。

イケてる部活1位:サッカー部

サッカー部は、「さわやかでかっこいい」「クラスの中心になっている人が多い」「運動神経のいい人が集まる」などのイメージがあるよう。ちなみに、日本の学校では、サッカー部は男子のみの部がほとんどで、女子サッカー部はかなり少数です。上記のイメージは男子サッカー部に対するものと考えていいでしょう。

イケてる部活2位:バスケットボール部

バスケットボール部は、「スラムダンク」などの有名漫画や映画の影響から「青春」というイメージが多いようです。「陽キャが多い」「学校の球技大会で活躍する」という理由からイケていると言われるようです。ちなみにバスケ部は男女ともに人気の部活動です。

イケてる部活3位:ダンス部

ダンス部は、女子を中心に「キラキラしている」「文化祭で盛り上がる」「かわいい子が多い」などのイメージがあるよう。最近のダンスブームが影響しているかもしれませんね。

イケてる部活4位:野球部

野球部は「礼儀正しい」「キツそうだけど練習を頑張っている」といったイメージがあるようです。野球部は他の運動部よりも礼儀に厳しいことが多いですよね。帽子を取って礼をしたり、立ち止まって挨拶をしたりしている野球部の姿は印象的です。

イケてる部活5位:吹奏楽部

吹奏楽部は、文化部とはいえ、特に強豪校では練習がハードだったり、人数が多くてパートの争奪戦があったりと、シビアな一面もある部活動です。「楽器を演奏できるのはかっこいい」「学校行事で活躍している」などのイメージがあるようです。

イケてる部活5位:バレーボール部

バレーボール部については記事内に書かれていませんが、バレーボールはチームワークを必要とするスポーツということもあり、仲間を大切にしているイメージがあります。また、競技中に選手同士が大きな声を掛け合うことから、明るくハキハキとした人が多い印象もあります。

学校の部活動はなくなる?

ただ日本の中学校の部活動は、徐々に学校主体から地域クラブへ移行する流れとなってきています。教員の過重労働の削減や専門的指導の必要性などが理由のようです。部活動がなくなると、学校でのカーストに部活動は関係なくなるかもしれませんね。

ちなみに、部活動に所属していない「帰宅部」の生徒は、学校での部活動ではなく地域のスポーツチームに所属している場合もあれば、勉強に注力している場合もあります。帰宅部の生徒の傾向は一概には言い切れないかもしれませんね。

「キャラ付け」の文化とその影響

キャラ付け文化

学校はある意味「閉鎖的な空間」です。小学校は6年間、中学校は3年間、ほとんど同じ顔触れで同じ空間で過ごすことになります。社会人になれば、職場の人事異動やライフステージの変化があるので人間関係は学生時代に比べると流動的。学校は人間の入れ替わりがほとんどなく、「キャラ付け」は固定されていくため、スクールカーストが生まれやすいのかもしれません。
クラス替えがあっても、キャラ付けはあまり変わらないよう。「委員長タイプ」のようなしっかり者は、クラスが変わっても周囲から頼りにされるでしょうし、「ギャル」のような目立つタイプの生徒は、クラスが変わっても同じような友人と仲を深めるでしょう。また、カーストが下位だと自覚している生徒は、いつしか自分の性格を「控えめ」だと捉える傾向があるよう。クラスが替わっても、消極的な生徒はあまり積極的に行動することはないのかもしれません。キャラ付けによって生徒の個性や魅力が抑え込まれてしまうなら、それは好ましいことではないですよね。
ただ、このようなキャラ付けを進学のタイミングで変えようとすることを「高校デビュー」や「大学デビュー」などと呼ぶこともあります。同じ中学校や高校から進学する友人が少ないほど、周囲の人間関係は大きく変わるので、キャラ付けを変えることも可能なのかもしれません。

海外との比較。スクールカーストやキャラ付けは日本だけ?

海外との比較

日本と海外でスクールカーストに違いはあるのでしょうか?アメリカではカースト内でそれぞれをキャラ付けした名称が使われています。学園ドラマでよく聞く名称で、キャラの特徴も明確に描かれていることが多いです。
例えば「ジョックス(Jocks)」はスクールカーストでトップの男子生徒の呼び名です。アメリカンフットボールのキャプテンなど体育会系のことが多いよう。
「ナーズ(Nerds)」は自分の興味対象以外はかまわない「オタク」の生徒の呼称。カーストでは下位にあたり、文科系の生徒だったり、勉強熱心な生徒だったり、コンピューターオタクだったりするようです。
この、ジョックスがナーズをからかう描写がドラマで描かれることもありますね。同じように、日本でもカースト上位グループにいる生徒が下位グループにいる生徒に強く当たったり、いじめともとれるような態度をとったりするのはドラマ等でも見られます。ヒエラルキーによるキャラ付けは世界共通なのかもしれません。

スクールカーストはいじめ?問題と解決策は

スクールカーストはいじめ?

前章でも触れましたが、いじめとスクールカーストは異なるものですが、発展する可能性は否定できません。いじめに発展してしまった場合にはどのように対応すれば良いのでしょうか。明確な正解はありませんが、スクールカーストを題材とした日本の漫画やドラマにそのヒントがあるかもしれません。
興味がある人は、以下のような作品を見てみてくださいね。

  • 進撃のスクールカースト

※劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACKの特典映像

  • 野ブタ。をプロデュース

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  • 桐島、部活やめるってよ

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  • ビリオン×スクール

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参考文献:

鈴木翔・本田由紀著『教室内(スクール)カースト』初版,光文社,2012年,全312ページ

堀裕嗣 著『スクールカーストの正体 -キレイゴト抜きのいじめ対応-』初版,小学館,2015年,全208ページ
株式会社オウチーノ『「スクールカースト・社会人カースト」実態調査』,2016/3/18(参照日2025/3/6)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000123.000014097.html

株式会社リクルート「スタディサプリ進路」『現役高校生約700人が選ぶ「イケてる部活ランキング」発表!』,2023/5/25(参照日2025/3/6)https://shingakunet.com/journal/fromsapuri/20230420000006/

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