変わる日本の運動会や体育祭。開催は春?お弁当廃止?海外とも比較【日本の学校】

  • Mar 9, 2025
  • Yumi

運動会 体育祭

日本の学校文化のひとつ、「運動会」と「体育祭」。かつては秋に開催されることが一般的でしたが、最近では春に行う学校が増えているのをご存じですか?今回は、近年の日本の運動会・体育祭の傾向や、行われる一般的な種目などを紹介します。さらに、運動会の歴史や起源、FUN! JAPANグローバルスタッフの出身国である海外との比較についても見ながら、日本の運動会の魅力や特徴を探ってみました。

運動会とは?体育祭との違いは?

運動会とは?体育祭との違いは?

運動会とは、校庭などで行われる体育的な学校行事のこと。朝8時30分~9時ごろに始まり、昼食を挟んで15~16時ごろに終了する、一日がかりのイベントです。
一般的に、幼稚園(保育園)や小学校では「運動会」、中学校や高校では「体育祭」と呼ばれます。
幼稚園や小学校での運動会は、楽しく身体を動かすことを狙いとしており、先生が主体となって運営します。競技種目などの基本的な運動能力を身につけるためのプログラムのほか、お遊戯や体操、ダンスなど練習の成果を発表するようなプログラムもあります。
中学校や高校の体育祭では、実行委員会を中心とした生徒が主体となり、競技を考えて運営することが多いです。準備期間もしっかり確保され、イベントを作り上げていく連帯感を養うことなどが目的とされています。

また、全学年を紅組・白組などに分け、競い合って勝者を決めるのも日本の運動会の特徴。中学・高校になるとクラスが増える学校が多いため、紅白でなく学年縦割りで組ごとに分かれて競う場合もあります。子ども達は必死に競技に取り組み、応援し合うことで会全体が盛り上がるのです。

日本の運動会・体育祭はいつ開催?

日本の運動会・体育祭はいつ開催?

日本の運動会・体育祭の開催時期は秋が主流でしたが、近年は春の開催が増えています。理由は大きく二点で、最近は9~10月の秋でも温暖化により気温の高い日が多く、熱中症のリスクが高まること、また冬の受験に向けて秋以降は授業時間を多く確保したいためのようです。
このように、運動会・体育祭のかたちは時代ともに変化してきています。他にも、近年変化したことをいくつか紹介します。
かつては、朝から夕方までの一日開催だったのが半日で終わるケースも増えています。熱中症のリスク軽減や、教員の業務負担の軽減などが目的です。

お弁当

また、昼食のお弁当はそれぞれの家族で食べるのが通例となっていましたが、今では子どもは教室で給食かお弁当を食べ、保護者はいったん帰宅するなど、親子別々で昼食をとるパターンも増えてきています。共働き家庭やひとり親家庭で保護者が運動会に来られない子どもへの配慮のためとされています。
さらに、近年は安全性を重視して、事故やケガに繋がりやすい組体操や騎馬戦などの競技は廃止される傾向にあります。
時代による様々な配慮から、運動会の在り方も変化しているんですね。

運動会・体育祭では何をやる?種目は?

繰り返しになりますが、日本の運動会・体育祭は身体的な能力を伸ばすだけでなく、クラスメイトや友達と同じ競技に参加することで協調性を育むという目的もあります。種目をやり遂げる達成感や、成功する喜びや悔しさなど、さまざまな感情や体験を経験できる機会なのです。
そんな運動会・体育祭でどんなことをするのか、種目をいくつか紹介します。

徒競走

徒競走

50mや100mなどの短距離を走る速さを競う種目です。「リレー」はチームでバトンを受け渡しながら順に走り、速さを競う団体戦。どちらも足の速さを競うもので、勝敗が分かりやすく、運動会の花形の競技です。

障害物競走

障害物競走

ネットやフープなどの障害物を乗り越えてゴールを目指す競技。障害の難易度を変えることで、幼稚園児から高校生まで楽しめる定番の競技です。

玉入れ競争

玉入れ競争

チームごとに高いところにあるカゴに時間内でどれだけ多くの玉を投げ入れられるかを競う団体競技。異学年合同で楽しめるので、こちらも定番の種目です。

大玉転がし

大玉転がし

何人かのグループで協力してゴールまで大きな玉を転がして運ぶ速さを競う種目。早く玉を転がすには、グループで力加減やスピードを調整する必要があるので、チームワークや協調性を育める競技です。

綱引き

綱引き

 2チームに分かれてロープを引きあう種目です。ロープの中心線が既定の線を越えるまで引き込むことができたチームの勝ち。大人数で参加できる種目です。

棒倒し

棒倒し

いくつかのチームに分かれ、相手の陣地に立てられた棒を倒す種目です。棒を守る人と相手チームの棒を倒す人で役割分担をして競技を行います。接近戦で危険も伴う競技なので、高校の男子生徒のみで行うなどの配慮があることも。

騎馬戦

騎馬戦

4人程度で騎馬を作り、上に乗った人が相手チームの帽子を奪い合う競技です。騎馬戦も棒倒しと同様に、騎馬からの落下などで怪我をする危険性もあるので注意が必要です。

借り人(物)競争

借り人(物)競争

カードに描かれたお題に当てはまる人や物を見つけて、一緒にゴールまで連れていく競技。お題は「眼鏡の人」や「赤い服の人」、「うちわ」「青色のタオル」などで、当てはまる人や物を生徒や保護者、先生などから見つけてゴールまで連れて行ったり持って行ったりします。運動能力によらず楽しむことができ、全員で盛り上がれる競技です。

表現

表現

「表現」という種目では、子どもたちがダンスなどを披露します。地域に伝わる伝統芸能を披露するのが定番になっている学校や地域もある一方、北海道発祥の「ソーラン節」や高知県で始まったとされる「よさこい」など、一部の地域で始まったものが全国に広まって定番になっているものもあります。踊りで基本的な体の動きを身につけるほか、各地の文化や集団での一体感、楽しさを学ぶといった狙いがあるようです。また、小学校・中学校では、体育で「ダンス」が必修となっています。

リレー

リレー

運動会の最後、クライマックスがリレーです。通常、クラスから足の速い人が選抜されて、組やクラスの対抗戦で行われます。リレーの勝敗によってチーム全体の勝負が決まる場合もあるため、大いに盛り上がります。
ただ、選抜選手はお昼休みや放課後などに特訓が義務となる場合があり、選ばれた子どもには少し負担がかかります。それでも、リレー選手に選抜されることは子どもや親にとって名誉なことであり、嫌がる子どもはあまりいないようです。

日本の運動会・体育祭の歴史と起源

 日本の運動会のはじまりは、1874年に東京の海軍兵学校で外国人教師の指導のもと行われた「競闘遊戯会」とされています。座学の合間に、生徒たちのストレス発散や運動の機会を増やすことを目的に、競技的なものと遊戯的なものを混ぜた18種目が行われたようです。
はじめは高等教育機関で行われていましたが、明治時代末期ごろから小学校などへも広まっていき、次第に今のような運動会・体育祭のかたちになっていきました。

海外にも運動会はある?

海外にも運動会はある?
サックレースの様子

日本の運動会・体育祭は、徒競走などの個人競技だけでなく、リレーや騎馬戦などの団体競技や、ダンスなどの種目が組み込まれています。また、競技のための練習はもちろん、開会式や閉会式の入場行進の練習までしっかりと行ったうえで当日を迎えます。協調性や和を重視し、全員が一丸となって盛り上がるのが日本の運動会・体育祭の特徴です。
海外でも運動会のような「スポーツイベント」を行う国もありますが、ほとんどは個人競技で、日本の運動会とは狙いや雰囲気が大きく違うようです。
欧米で行われるスポーツイベントは、フィールドで身体を動かすのを楽しむことを目的としている場合が多いよう。日本のように相手チームと真剣に競争したり、これまでの練習の成果を発揮したりする場ではなく、ゲーム感覚で勝敗を意識せず行うイベントという側面が強いようです。
また、日本の運動会は全員参加が基本ですが、海外での運動会のようなイベントは自由参加とされていることがほとんど。さらに、日本のように一日がかりのイベントではなく、半日や午後の2時間程度で終了するなど、時間も短く、レクリエーションのような位置づけの場合が多いようです。

海外の運動会は?現地出身の人に聞いてみた

では、海外では運動会は行われているのでしょうか?行われている場合は日本とどのような違いがあるのでしょうか?FUN! JAPANのグローバルスタッフにインタビューしてみました。

台湾

「台湾にも運動会はあり、学校の創立記念日前後に運動会を開催することが多いです。紅組、白組のようなチーム分けはせず、個人戦かクラス対抗で行うのが一般的。チアダンスによる応援合戦があるのが特徴的で、自分の母校では振り付け、フォーメーション、小道具の準備など全て生徒自ら担当していました。」

  • 団体種目:大縄跳び、綱引き、バレーボール、リレーなど
  • 個人種目:個人走(200m、400m、800m)、走高跳、立幅跳、砲丸投など
  • 応援合戦:クラスごとにチアダンスを披露

香港

「香港の学校でも運動会が開催されます。元から学校では、クラス以外のグループ分けが存在しており、そのグループによって制服や運動服も色分けされているのが一般的です。校訓の4文字(例えば、学校A:『愛、敬、勤、誠』、学校B:『忠、信、仁、禮』など)によって、4『社』または『色』に分かれており、運動会もそのグループ対抗で競います。運動会の最後がクラス選抜メンバーによるリレーであることは日本と同じです。」

  • 種目:陸上競技の項目:100m、200m、400m、800m、1500m、3000m競走ハードル、走り幅跳び、走り高跳び、円盤投げ、やり投げ、4x100&4x400のリレー
  • 応援合戦:「社」ごとにチアダンスの披露や、スローガンの唱和を行う
  • スーベニア:「社」の色でアクセサリーやバッジなどスーベニアを作って、自社の人に配布。他社の人と交換もOK

タイ

「タイでは小・中・高の学校で『色分けスポーツ大会』(กีฬาสี)が開催されます。競技、クリエイティブ、応援パフォーマンスの3項目で競います。選手の練習のほか、コスチュームやツール、パフォーマンスの練習などあるため、大規模な学校では大会準備に1~3か月かかります。小さな学校や保育園・幼稚園ではここまでの規模では行われていないと思います。」

  • 高度な競技:サッカー、徒競走、リレー、ハードル走など学校のベストスポーツ選手のみ出場。都市部では学校にプールがあれば水泳が入る場合もあり
  • ユーモア系の競技:綱引き、2人3脚、大きな麻袋に両足を入れてジャンプしながらゴールを目指すサックレース、障害物競争など、誰でも参加できる
  • クリエイティブ:応援席の掲示板
  • 応援パフォーマンス:チアリーディング、ドラム・メジャー、応援席でのパフォーマンス(歌・ウェーブ・ポンポンや手袋の演技・人文字など)、選手入場のパレード(コスチューム・看板)などのアイディアやクオリティで競う

ベトナム

「学校で運動会が行われることは少なく、県や全国レベルでの大会が一般的でした。実際、私自身は運動会に参加したことがありません。しかし、近年では年間を通じて運動会を開催する学校が増えてきています。グループ分けはなくクラス対抗で競います。」

  • 種目:サッカー、陸上競技、バドミントン、チェス、キックシャトル、Vovinam(ベトナムの伝統武道)、綱引きなど。竹馬競争のような地域独特の競技もあり
  • 歌やダンスなど:開会式や閉会式で披露されることもある

インドネシア

「運動会の文化がなく、ほとんどの学校で行われていません。インフラが整っていない学校もまだ多くあります。まだ文化祭の方が開催されている可能性が高いです。中・高では、人気No.1スポーツであるサッカー、あるいはフットサルの大会や、主に高校ですがバスケットボール大会が開催されます。」

アメリカ、イギリスなどその他の国

アメリカでは「Field day」、イギリスでは「Sports day」と呼ばれるイベントがありますが、いずれも日本のように競い合うというよりは体を動かして楽しむレクリエーションの要素が強いイベントのようです。

日本の運動会・体育祭は重要な学校行事

運動会は日本独自のものではないながらも、国によって独特の文化があるようですね。日本では、レクリエーションとしてだけでなく、子ども達が本番までに練習を重ねて準備をし、一丸となって競技に臨み、感動を分かち合う、大切な学校行事のひとつとして捉えられているのです。

出典:
リクルート スタディサプリ 進路(大学・専門学校)#高校生なう『体育祭とは?運動会との違いから楽しみ方まで体育祭のいろはを伝授!』,配信日2024/5/9(参照日2025/2/19)https://shingakunet.com/journal/trend/20240426000003/#:~:text=%E3%81%AD%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82-,%E9%81%8B%E5%8B%95%E4%BC%9A%E3%81%A8%E4%BD%93%E8%82%B2%E7%A5%AD%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%A6%EF%BC%9F,%E9%81%8B%E5%96%B6%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82
運動会屋タイムズ『運動会は日本だけ?気になる世界の運動会について解説!』,配信日2023/10/30(参照日2025/2/19)
https://www.udkya.com/columns/corporate-undokai/7308
『変わりゆく運動会。「半日だけ開催」「危険な競技は廃止」「お弁当は教室で」…。あなたは賛成?それとも反対?』,配信日2024/9/4(参照日2025/2/19)
https://fujinkoron.jp/articles/-/13932
レファレンス協同データベース『運動会は、いつ頃、どこで、どのようにして始まったのかと、当時の写真が載っている児童書が見たい。』,最終アクセス2024/12/11(参照日2025/2/19)
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000247148&page=ref_view
レファレンス協同データベース『“運動会”の起源について、所蔵資料から紹介してほしい。』,最終アクセス2023/11/14(参照日2025/2/19)
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000196956&page=ref_view
駒澤女子大学・駒澤女子短期大学『日本文化エッセー 「運動会」にみる近代の日本文化』,配信日2022/09/21(参照日2025/2/19)
https://www.komajo.ac.jp/uni/window/c_hc_japanese/c_hc_japanese_essay_22007.html
新スポーツ推進団体『運動会の歴史について −歴史を知ればさらばおもしろくなる–』,配信日2023/10/15(参照日2025/2/19)
https://newspo.jp/topics/%E9%81%8B%E5%8B%95%E4%BC%9A%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/

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