梅は中国原産の花木で、日本には3世紀の終わり頃に伝来したと言われています。観賞用や食用としての役割だけでなく、日本の伝統文化にも深く根付いており、一足早い春の訪れを告げる植物として古くから愛されてきました。現在では花見といえば「桜」を思い浮かべるのが一般的ですが、奈良時代までは「梅」が主役でした。
今回の記事では梅の特徴、類似種との見分け方、梅の名所や文学における位置づけについて詳しくご紹介します。
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ここに注目!梅・桜・桃の見分け方
日本の春を彩る梅、桜、桃は古くから親しまれてきた代表的な花です。しかし近年、地球温暖化の影響で開花時期が変化し、どの花をいつ楽しめるのか戸惑う方も多いようです。見た目が似ているため区別が難しいこともありますが、実は下記三つのポイントに注目すればある程度見分けがつくようになります!
開花時期
梅
春の訪れを告げる花として桜や桃よりも一足早くつぼみがほころび始め、品種によっては12月中旬頃に開花することも珍しくありません。
桜
開花時期は3月中旬から5月上旬で、沖縄では冬に咲き始め、本州や九州では3月中旬頃から、北海道では最も遅く開花します。
桃
桜とほぼ同時期の3月中旬から4月下旬に咲きます。一般的に桜より先に見頃を迎えますが、地域や気候の影響で開花時期が重なることもあります。
花びらの特徴
梅
梅の花びらは丸みを帯びており、花びらの先端が滑らかなのが特徴です。また、花柄はなく枝に直接くっつくように咲きます。
桜
桜の花びらは先端に切れ目があり、シャープなハート型をしています。長い花柄(緑色の軸の部分)は花の重さで垂れて、花びらが下を向くことが多いです。
桃
桃の花びらは楕円形や先が尖っている形で、梅とも桜とも異なります。桜に比べて花柄が短く、同じ場所から2つずつ花芽が出るため、華やかな印象を与えます。
幹の見た目
梅の幹は黒ずんでおりザラザラした質感をしています。一方、桜の幹は赤茶色で縦に細かいイボのような模様が見られ、桃の幹は白っぽい色で撫でるとつるつるしているのが特徴です。
梅の花は何種類ある?
梅の花は白梅や紅梅など様々な色がありますが、その種類はおよそ300種類以上あるとされています。これは江戸時代(1600〜1868年)に品種改良や育成が盛んに行われたことが大きな要因であり、多彩な品種が楽しめるのは当時の人々の工夫と努力の賜物といえるでしょう。
花梅とは?特徴や種類(3系9性)
梅には観賞用の花梅と実を収穫するための実梅があり、前者は大まかに3つの系統(野梅系、緋梅系、豊後系)に分けられ、さらに花びらや枝の形など、より詳細な特徴によって9つの性に分かれます。
3系 | 9性 | 特徴 |
野梅系(やばいけい) | 野梅性(やばいしょう) | 原種に近い梅。枝が細く、葉や花も小型。 |
難波性(なにわしょう) | 枝は細くてよく茂り、比較的晩咲き。 | |
紅筆性(べにふでしょう) | つぼみの先端が筆のように赤く尖っている。 | |
青軸性(あおじくしょう) | 枝や萼は常に緑色で、花は青白色。 | |
緋梅系(ひばいけい) | 紅梅性(こうばいしょう) | 紅梅性(こうばいしょう) |
緋梅性(ひばいしょう) | 花の色がさらに濃く、緋色を帯びるのが特徴。 | |
唐梅性(とうばいしょう) | 下向きに咲く。始めは桃色~紅色で、終わりには白っぽくなる。 | |
豊後系(ぶんごけい) | 豊後性(ぶんごしょう) | アンズとの交雑種。大輪で淡紅色の花を咲かせる。 |
杏性(あんずしょう) | 豊後性よりも枝が細く、葉も小さい。花は遅咲きのものが多い。 |
実梅とは?特徴と種類
実梅は果実を収穫するために栽培される品種で、梅干しや梅酒などの加工品に利用されます。代表的な品種として南高梅や白加賀梅などが挙げられますが、特に南高梅は日本全国で広く栽培されており、全体の半分以上のシェアを占めています。
関東の「三大梅林」はどこ?
日本の有名な梅の名所といえば、関東地方にある「三大梅林」を外すことはできません。以下では、それぞれの見どころとアクセス方法についてご紹介します。
【茨城県】偕楽園
偕楽園は金沢の兼六園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園の一つで、1842年に水戸藩第9代藩主・徳川斉昭公が領民の憩いの場として開園しました。園内には約100品種3,000本の梅が植えられており、様々な品種があるため「早咲き」「中咲き」「遅咲き」と長期間にわたり観梅を楽しむことができます。
2月中旬から3月中旬に開催される「水戸の梅まつり」は120年以上の歴史を持ち、毎年多くの観光客が国内外から訪れます。
- 所在地:茨城県水戸市常磐町1-3-3
- アクセス:JR常磐線「水戸駅」よりバスで約20分
- 料金:
【一般】大人320円、小人160円
【団体】大人240円、小人130円 - 営業時間:
【偕楽園本園】2月中旬~9月30日 6:00~19:00、10月1日~2月中旬 7:00~18:00
【好文亭】2月中旬~9月30日 9:00~17:00、10月1日~2月中旬 9:00~16:30
※12月29日~31日休館 - 公式サイト:https://ibaraki-kairakuen.jp/
【埼玉県】越生梅林
越生梅林は歴史ある梅の名所で、樹齢670年を超える古木「魁雪」をはじめ、様々な品種の梅を鑑賞することができます。梅林周辺を含めると、開花時期には約20,000本の梅が咲き誇り、訪れる人々を魅了します。
越生の梅は歴史が古く、1350年頃に九州大宰府から分祀した際に菅原道真公にちなんで梅を植えたのが起源とされています。毎年2月~3月には「越生梅林梅まつり」が開催され、ミニSLや地元のお囃子、和太鼓など様々な催し物が楽しめます。
- 所在地:埼玉県入間郡越生町堂山113
- アクセス:越生駅から黒山行きバス「梅林入口」下車徒歩1分
- 料金:400円(中学生以上)
- 営業時間:8:30~16:00
【静岡県】熱海梅園
1886年に開園した熱海梅園は日本一早咲きの梅と遅い紅葉で知られる名所で、樹齢100年を越える梅の古木を含め、60品種・469本の梅が植えられており、毎年11月下旬~12月上旬に第一号の梅の花が咲きます。
1月中旬~3月中旬に開催される「熱海梅園梅まつり」期間中は足湯や飲食店・土産店がオープンし、日によって熱海芸妓連演芸会や剣舞、大道芸、甘酒無料サービスなどのイベントも実施されるため、毎年多くの観光客で賑わいを見せています。
- 所在地:静岡県熱海市梅園町8-11
- アクセス:
①JR熱海駅から「相の原団地」行きバスにて約15分→「梅園」下車
②JR熱海駅より伊東線にて約3分→JR来宮駅下車→徒歩約10分 - 料金:無料(梅まつり期間中のみ有料)
- 営業時間:入園時間の制限なし
梅を題材とした日本の和歌や俳句
観賞用や食用としてだけでなく、梅は日本の和歌や俳句とも深く結びついています。創作のモチーフとして多くの作品に取り入れられていたことから、文人墨客にどれほど愛されていたかが分かります。
万葉集
日本最古の歌集である『万葉集』には約120首もの梅に関する歌が収録されており、桜を詠んだ歌よりも多く、当時の梅の人気を物語っています。奈良時代(710年頃〜794年)の花見といえば梅の花が一般的で、貴族や知識人にとって春の訪れを告げる花であると同時に、中国から渡来した文化や美を象徴する存在でもありました。
古今和歌集
『古今和歌集』は平安時代前期に編纂された日本最初の勅撰和歌集で、自然や四季をテーマにした和歌が多く収められています。その中で、梅は春を代表する花として頻繁に詠まれ、桜と並ぶ重要なモチーフとして扱われています。
また、古今集以後の梅の花は「姿を愛でる」ものから「香りを楽しむ」ものへと変わっていき、香りを詠んだ内容が主流となりました。
俳句
俳句においても梅は晩冬と初春の重要な季語として扱われており、松尾芭蕉の「梅が香に のっと日の出る 山路かな」(明け方の山道を歩いていたら梅の香りに誘われて朝日が昇った、という句)や小林一茶の「梅が香や どなたが来ても 欠け茶碗」(春の梅の時期になったが誰が来ても立派な茶碗を出すようなもてなしはできない、という句)など、梅の花を取り入れた名句が数多く残されています。
梅の花言葉は?関連することわざもご紹介
梅の花言葉
梅の花言葉は品種や花の色によって異なりますが、主に以下のような意味があります。
高潔・忍耐
厳しい寒さの中で凛と咲き誇る梅の姿に由来しています。
忠実
菅原道真の「飛梅伝説」にちなんでつけられた花言葉です。平安時代(794〜1180年)、道真が左遷される際に主人を慕って京都から大宰府まで飛んだ梅の逸話から生まれました。この伝説の舞台である太宰府天満宮には、樹齢1,000年を超える「飛梅」が現存し、境内で最も早く咲く梅として参拝者を魅了します。
また、梅は「歳寒の三友」のひとつでもあり、紅白の花を咲かせることも縁起がよいとされています。
梅にまつわることわざ・慣用句
梅根性に柿根性
梅は加工しても酸味が残るため、「梅根性」とは頑固でなかなか変わらない性質を指し、良い意味では粘り強く努力を続ける頑張り屋さんのことを表します。一方、「柿根性」とは渋柿が焼くとすぐに渋みが取れ、干し柿にすると短時間で甘くなることに由来し、一見頑固そうに見えても実は変わりやすい性質を指します。
梅木学問(うめのきがくもん)
梅の木は生長が早いのですが、大木にはなりません。 転じて、小器用に身につけた大成しない学問のことを言います。
桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿
桜は剪定すると木の勢いがなくなり枯れる可能性が高いため、切ってはいけません。一方で梅は適切に剪定することで良い花や実をつけます。状況に応じて適切な対応をすることの大切さを説いています。
梅に鴬
梅の花を咲かせる木に鶯が止まるという光景を指し、相性が良いものを表現する際に使われます。類語として松に鶴、紅葉に鹿、牡丹に蝶、柳に燕などが挙げられます。
桜梅桃李(おうばいとうり)
桜梅桃李はそれぞれの個性を持ち唯一無二の存在であるように、人間も他者と比較せず、自分らしく生きるべきだという教えが込められています。
梅はその日の難のがれ
梅は古くから健康を守る効能があるとして、古くから日本人に親しまれてきた植物です。旅先で熱病や風土病にかからないように梅干を「薬」として携帯し、朝出掛ける前に食べれば一日を無事に過ごせると考えられていました。
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