日本の「織物」とは。代表的な産地、特徴、歴史、技法の種類など

織物 伝統工芸 日本文化 歴史 特徴

日本の伝統的工芸品のひとつである「織物」は、日本の歴史とともにさまざまな地域で発展してきました。北海道から沖縄県まで、地域や素材ごとにさまざまな織物が今も織られ続けています。そんな日本の織物の特徴や歴史、技法、種類などをご紹介。日本の伝統的な織物の世界を体験しましょう!

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日本の織物の特徴 

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大島紬 © K.P.V.B

日本の織物は染色した糸を使い、機織り機で経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交差させて織りあげる布地です。糸を先に染めることから先染めの生地とも呼ばれます。そんな日本の織物の特徴のひとつが、糸の染め方や織り方、撚(よ)り方によりさまざまな模様や風合いを生み出すこと。また、各産地の気候や風土も、それぞれの地域ならではの風合いのある織物を生み出す要素となっています。

日本の織物の歴史

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日本の織物の歴史は縄文時代までさかのぼります。というのも、福岡県の雀居遺跡などから機織りの道具が見つかっており、その頃には織物が織られていたことが分かっているからです。だたし、当時の織物は大麻(たいま)や苧麻(からむし)などの植物繊維から作られた素朴なものでした。

奈良時代には古代中国の影響により、質の高い絹織物が身分の高い人たちの間で普及。平安時代にはさらに技術が向上し、皇族や貴族が着用する日本独自の文様が生まれました。

江戸時代になると、絹の原料となる繭を生産する養蚕が奨励され、日本でも良質な絹織物が生産できるようになります。そうして、京都の西陣織の技術や織機が各地に広がり、中部、関東、北陸、東北南部に絹織物の産地ができました。近代以降は工業化により大量生産が増える一方、手織りの技術も受け継がれ、伝統が今も息づいています。

※縄文時代後期:紀元前約2000年〜1000年、室町時代:1336〜1568年、平安時代:794〜1180年、江戸時代:1603年~1868年

日本の織物の基本的な技法 

日本の織物には、大きく分けて3種類の組み合わせ方があります。ほとんどの織物がこの3種類で織られていますが、近年は「綟り織」を加えて4種類を基本としていることが多いです。

平織 (ひらおり)

平織とは、経糸と緯糸が1本ずつ交互に交差するように織る、基本形の織りの技法です。特徴は糸が交わる点が多く、丈夫さと摩耗に強いこと。比較的薄手の織物に仕上がりますが、糸の質や太さ、撚りの強さなどにより、異なる風合いの織り方ができます。

綾織 (あやおり)

綾織は経糸2本に緯糸1本をくぐらせたり、経糸3本に緯糸1本をくぐらせたりといった交差のさせ方で織る技法です。特徴は、経糸と緯糸が交わる点が斜めに現れること。そのため、斜文織とも呼ばれます。平織と比べて交差する点が少ないため、摩耗にやや弱いものの厚手の生地を織ることができる技法です。また、柔軟性とシワになりにくいという特徴ももちます。

繻子織 (しゅすおり)

繻子織とは、糸を交差させる点に「飛ばし」と呼ばれる一定の間隔をあけて織る技法。経糸か緯糸のどちらかの糸だけが表に現れているように見えるため、光沢のある織物になります。綾織よりさらに交差する点が少ないため、摩耗に対する弱さがある一方、滑らかな風合いが特徴です。代表的な生地にサテンがあります。

綟り織 (もじりおり)

綟り織は、経糸を緯糸の間で絡み合わせながら織ることで織り目に隙間を作り、網状の生地にする、搦み織 (からみおり) とも呼ばれる技法です。軽く通気性も良いため、「うすもの」と呼ばれる紗 (しゃ) 、絽 (ろ) 、羅 (ら)といった夏の着物用の生地を織る際に使われる織り方です。

多彩な織物の技法

日本では基本的な技法をもとに組織を応用したり、糸の染め方や太さなどを変えたりすることで、多彩な織物の技法が生まれてきました。それらのなかから代表的なものを紹介します。

紬 (つむぎ)

紬は、太い部分や細い部分、節などのある均質ではない「紬糸」で織った絹織物です。そのため、素朴な風合いの布地に仕上がります。また、昔から紬の多くは日常着だったため、その土地ならではの気候風土に合ったものが生産されていました。現在は、各地方の特産品として受け継がれています。

絣 (かすり)

絣は、柄に応じて染め分けた絣糸を使ってかすったような柄を織りあげる織物です。糸の染め方には、染め残す部分を糸でくくってから染める「括り染め」をはじめ、「板締め染め」、「織締め」などがあります。このような絣糸で織ると、白い部分が柄となって独特のかすれ文様が描かれます。

縮緬(ちりめん )

縮緬とは、緯糸に生糸を強く撚った糸を使い、表面にシボ(細かいシワ)がよるように織った絹織物。このシボにより、シワがよりにくいのも、ちりめんの魅力です。近年、絹以外に化学繊維も用いられるようになりました。

縮織(ちぢみおり)

縮織は、緯糸に撚りの強い糸を使用した表面にシボがある、主に綿や麻を原料とした織物です。織り上がった後、シボを出すためにぬるま湯のなかで手もみを行います。肌に密着せずベタつかないため、初夏から盛夏までの着物に用いられる織物です。

代表的な織物の産地と特徴

南北に長い地形で四季がはっきりとした日本では、地域ごとの気候風土に合ったさまざまな織物が生まれてきました。その数は、経済産業大臣によって「伝統的工芸品」に指定されている織物だけでも38種類。産地ごとに特色のある織物が作られ、着物や和装小物はもちろん、洋服やアクセサリーなどさまざまなものに使われています。

西陣織(京都

織物 伝統工芸 日本文化 歴史 特徴 西陣織 京都
※イメージ

西陣織とは、室町時代の応仁の乱(1467-1477)の西軍の本陣があった一帯 、西陣で織られる絹織物の総称です。そのため、西陣織にはさまざまな技法を用いた織物があり、綴織(つづれおり)や経錦(たてにしき)など12種類の技法 が伝統的工芸品に指定されています。

なかでも、金箔や銀箔が巻き付けられた金糸、銀糸を使った「金襴(きんらん)」と西陣織で指定された技法を組み合わせることで華麗な織物となる「西陣金襴 」は多くの人を魅了。このような華やかなものから日常で着られる紬や絣まで、多彩な種類が楽しめるのも西陣織の魅力です。

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本場大島紬 (鹿児島

織物 伝統工芸 日本文化 歴史 特徴 本場大島紬  鹿児島
© K.P.V.B

本場大島紬は、鹿児島県南方にある奄美地方原産の上品な色合いと艶が魅力的な絹100%の織物です。紬は一般的に太さなどが不均一な紬糸を使用しますが、本場大島紬は生糸を使用 。完成までの工程は大きく分けて30以上あり、半年から1年をかけて作りあげられます。最大の特徴は、仕上がりを想定して斑(まだら)に染められた糸を寸分違わず織り込んだ精緻な図柄。

代表的な柄は、奄美に自生するソテツの葉に毒蛇のハブが這う姿を織り込んだ龍郷柄(たつごうがら)です。また、軽くしなやかな肌触りとシワになりにくいという特徴もあります。加えて、150~200年も着られるほど丈夫なことも本場大島紬の特徴のひとつです。

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結城紬 (茨城栃木

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結城紬は、茨城県と栃木県にまたがる鬼怒川流域で作られる紬糸を使用した絹織物です。40以上の工程のほとんどが手作業で進められ、とても貴重な織物のひとつ。糸つむぎ・絣くくり・地機織りの3工程は、国重要無形文化財に指定され、2010年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されました。

特徴は軽くて保温性に優れ、やわらかい肌触り。代表的な柄は、亀の甲羅を六角形でかたどった亀甲文様。反物一幅(約40cm前後)に描かれる亀甲の数は80~200ほど。この数が多いほど緻密な亀甲柄になるため熟練の技が必要になります。

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久留米絣 (福岡

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(C) fukuoka prefecture tourism association

久留米絣は、福岡県久留米市を中心とする周辺地域で織られてきた国の重要無形文化財 に指定されている綿織物です。完成までに約30の工程を要し、制作期間は数カ月 に及びます。

このように手間暇のかかる久留米絣の大きな特徴が、かすれやにじみのある柄と綿素材ならではの夏は涼しく冬は暖かいこと。そして、着れば着るほど肌に馴染んで風合いが増していき、家庭で洗濯もできる 実用性と丈夫さも魅力となっています。

そんな久留米絣の基本的な柄は、青と白に染め分けられた経糸をずらして矢羽の図柄にする矢絣 ですが、現在では技術の進歩によりさまざまな柄も織られています。

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小千谷縮 (新潟

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小千谷縮は、新潟県小千谷市周辺で織られてきた苧麻(ちょま)を原料とした麻織物です。千数百年前から作られていたという越後上布(えちごじょうふ)を改良した織物で、越後上布とともに国の重要無形文化財に指定され、2009年にユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

小千谷縮の特徴は、縮ならではの独特なシボと麻ならではの水分を発散しやすい性質により、ベタつかずさわやかな清涼感があること。夏にぴったりの織物です。また、織り上がった後に雪にさらすことで漂白効果が生まれ、美しい色と柄に仕上がります。

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