お祭りは日本文化に深く根ざした重要な行事であり、古来より人と人、さらには人と神々を繋ぐものでありました。 現在、日本全国には約30万もの祭りがあり、観光立国を支える文化資源として年間約5,300億円もの経済効果を生み出しています。それでもまだ世界に知られていない祭りが多くあります。今回は、そんな中でもとりわけ異彩を放つユニークなお祭りを5つ厳選し、その歴史と見どころをご紹介します。
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【宮城県登米市東和町】米川の水かぶり
米川の水かぶりの概要と歴史
米川の水かぶりは毎年初午(2月の最初の午の日)に行われ、800年以上前から登米市東和町米川の五日町地区に伝わる火伏せ行事です。2018年に「来訪神:仮面・仮装の神々」としてユネスコ無形文化遺産に登録されており、地域に火事が起きないように祈願する伝統行事として大切にされています。
米川の水かぶりの見どころ
水かぶり装束
火の神の化身となった男たちが裸の体にわらを巻きつけ、顔にはかまどのすすを塗ります。
練り歩き
水かぶりの一団が行事の出発点である大慈寺で火伏祈願を行った後、街に繰り出し、家々の前に用意された水を屋根にかけます。人々は男たちが身につけた「しめなわ」のわらを抜き取り、自家の火伏せのお守りにします。
ひょっとこおかめ
鐘を鳴らす墨染僧衣のひょっとこと天秤棒に手桶を担いだおかめが家々を訪れ祝儀をいただき、行事の後で行う酒宴の費用に充てます。
関連施設:法輪山大慈寺
奥州三十三観音十四番礼所として創建された法輪山大慈寺は米川の水かぶりの発祥地でもあり、行事当日に地域の人たちが作った豚汁のお振る舞い(募金制)、お土産やオリジナルグッズの販売が行われます。また、境内の特設ステージでは太鼓の演奏などが開催され、催行日限定の御朱印も頒布されます。
- 所在地:宮城県登米市東和町字町下56
- 営業時間:9:00~17:00
開催概要
- 開催時期:毎年2月の初午の日(2024年は2月12日)
- 交通アクセス: JR新田駅または石越駅から車で約30分
- 観覧席チケット:なし
- 関連サイト(日本語):https://miyagi-yonekawa.com/mizukaburi/
【石川県鳳珠郡能登町】あばれ祭
あばれ祭の概要と歴史
能登の夏の風物詩として知られるあばれ祭は、350年以上の歴史を持つ勇壮な祭りです。江戸時代に当地で疫病が流行った際、京都の祇園社から牛頭天王を勧請し悪疫を鎮めたのがあばれ祭の始まりとされており、その歴史と文化的価値から石川県の無形民俗文化財に指定されています。
あばれ祭の見どころ
奉燈(キリコ)
高さ7m、40数本のキリコが大松明の火粉の中を乱舞し、参加者も太鼓の音に合わせて「イヤサカヨッセ、サカヨッセ」と掛け声を上げます。
神輿
疫病を防ぐ神である牛頭天王は荒々しいことを好み、暴れれば暴れるほど喜ぶとされています。そのため、神輿が町中を駆け抜けた後に海の中や置き松明の火の中に投げ入れられ、原形がなくなるまで破壊されます。
関連施設:能登町大屋根広場(みなとのニワ)
旧能登町役場跡地に整備され、町の復興を象徴する新たな空間。あばれ祭のメイン会場として注目されており、行事初日の夜にはキリコたちが大きな松明を囲み、力強く舞う様子を間近で見ることができます。
地域住民の憩いの場としてだけでなく、能登の伝統文化を体験できる貴重な場所としても活用されています。
- 所在地:石川県鳳珠郡能登町宇出津新197-1
開催概要
- 開催時期:毎年7月第1金・土曜日(2024年は7月5~6日)
- 交通アクセス:
① 金沢駅西口から珠洲宇出津特急線(すずなり館前行き)に乗り、宇出津駅前で下車
② 七尾駅(または和倉温泉駅)でのと鉄道七尾線に乗り継ぎ、終点の穴水駅で下車。穴水駅前から北鉄奥能登バスの路線バスで約1時間
③ 能越自動車道のと里山空港ICより車で約25分 - 観覧席チケット:2025年は有料席チケットが販売予定
- 公式サイト(日本語):https://abarematsuri.jp/
【鹿児島県南さつま市】ヨッカブイ
ヨッカブイの概要と歴史
ヨッカブイは「夜着被り」に由来し、水難除けや集落安全、家内安全を祈願する伝統的な祭りです。ヤシ科の木「シュロ」で作られた仮面を被った青年が大ガラッパ(河童)として登場し、笹の葉を使って観客をお祓いし、悪いことをする子供たちを諭します。
この独特な行事は、地域の文化を象徴するものとして国選択無形民俗文化財にも指定されています。
ヨッカブイの見どころ
袋詰め
大ガラッパが奇声を発しながら子供たちを追いかけ、麻袋に詰め込みます。本来は水難防止を願う伝統行事ですが、現在は悪い子供を戒める意味も込められています。
高橋十八度踊り
玉手神社境内にある土俵で、4〜6歳の男の子が扮する「小ガラッパ」が水神様の祠の前で水難除けの相撲を取り、ヨッカブイによる高橋十八度踊りも奉納されます。
関連施設:歴史交流館金峰
2005年に金峰町で開設された考古資料館。「海流の民」をテーマにし、南さつまの歴史と文化を豊富な展示品と映像、模型で分かりやすく紹介しており、ヨッカブイに関する資料も展示されています。
- 所在地:鹿児島県南さつま市金峰町池辺1535
- 営業時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)、12月29日~1月3日
開催概要
- 開催時期:毎年8月22日
- 交通アクセス:指宿枕崎線(JR九州)五位野駅から車で約40分
- 観覧席チケット:なし
- 関連サイト(日本語):https://kanko-minamisatsuma.jp/event/7552/
【長崎県五島市】へトマト
へトマトの概要と歴史
へトマトは古くから伝わる小正月の民俗行事であり、国指定重要無形民俗文化財に指定されています。その起源や語源は明確ではなく、牛の供養や捕鯨時代の鯨の供養、さらには沖縄から伝わった可能性など、さまざまな説が存在しますが、いずれも確証を得ていません。
へトマトの見どころ
奉納相撲
子供や青年が白浜神社境内の土俵で相撲をとります。
羽根つき
その年に結婚した女性2人が晴れ着を身にまとい、酒樽に乗って羽根つきを行います。
玉蹴り(玉せせり)
赤組と白組と分かれ、鯨の目をかたどった藁玉を奪い合います。
綱引き
青年団と消防団に分かれて豊作と大漁を占います。
大草履の練り歩き
若者が長さ約3メートル、重さ約300キロの大草履を担ぎ、山城神社へ奉納します。神社に向かう際、見物している未婚女性を大草履に載せて胴上げを行います。
関連施設:五島観光歴史資料館
旧福江市制施行35周年を記念して建設され、福江城二の丸跡にある天守閣を模した資料館です。3階建ての館内には五島の歴史、文化が時代順に分かりやすく紹介されており、へトマトに使用される大草履の実物(長さ3m、重さ250㎏)も展示されています。
- 所在地:長崎県五島市池田町1-4
- 営業時間:6月~9月 9:00~18:00(入館は17:30まで)、10月~5月 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日:12月29日~1月3日 ※メンテナンス等で臨時休館する場合あり
開催概要
- 開催時期: 毎年1月第3日曜日(2024年は1月21日)
- 交通アクセス:福江港より車で15分
- 観覧席チケット: なし
- 関連サイト(日本語):https://goto.nagasaki-tabinet.com/event/51078
【沖縄県宮古島市】パーントゥ
パーントゥの概要と歴史
パーントゥは宮古島の一部地域で古くから行われている伝統的なお祭りで、国の重要無形民俗文化財とユネスコの無形文化遺産に指定されています。その起源は約300年前に海岸に漂着した仮面(来訪神)に由来すると言われており、悪霊払いと無病息災が主な目的です。
パーントゥの見どころ
①平良地区島尻のパーントゥ:
親パーントゥ・中パーントゥ・子パーントゥの3体が村を巡り、新築の家のお祓いや子供の無病息災を祈願します。「ンマリガー」(産まれ泉)と呼ばれる井戸の底に溜まった泥を全身に塗り、シイノキカズラの蔓草を巻きつけた姿が特徴です。
②上野地区野原のパーントゥ(サティパライ):
上野地区野原では「サティパライ」という名前で同様のお祭りが行われます。成年女性と少年のみが参加し、島尻のパーントゥと違い泥塗りなどは行いません。パーントゥの仮面を着用した男の子が先頭になり、その後ろに続く婦人たちはクロツグやセンニンソウで作った草冠を頭に被り、集落を練り歩きながら厄よけをします。
関連施設:宮古島市総合博物館
「宮古島の自然と風土」をコンセプトに、自然・歴史・民俗・文化について知ることができる施設。パーントゥのリアルな実物大模型が展示されており、パーントゥの複製のお面を使った記念写真の撮影も可能です。
- 所在地:沖縄県宮古島市平良字東仲宗根添1166-287
- 営業時間:9:00~16:30(入館は16時まで)
- 休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日にあたる場合は火曜日も休館)、国民の祝日、12月29日~1月3日
開催概要
- 開催時期: 島尻のパーントゥは旧暦9月吉日(2024年は10月8~9日)、野原のパーントゥは旧暦12月最後の丑の日
※お祭りの日程は直前まで公表されません - 交通アクセス:
島尻地区までは宮古島空港から約14キロ、約30分
上野野原地区までは宮古島空港から約6キロ、約14分 - 観覧席チケット: なし
- 関連サイト(日本語):https://miyakojima.jp/events/shimajiri-panto/
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