「中秋の名月」は秋の風物詩として、日本で親しまれている行事です。中秋の名月に食べる伝統的な日本料理のほかに、この時期になると「月見」に関連したグルメをコンビニエンスストアやファストフード店で見かけることができます。今回は、日本の中秋の名月に欠かせないグルメと、お月見の由来について紹介します。
中秋の名月とは?歴史と過ごし方を紹介
中秋の名月は旧暦の8月15日にあたる日で、月を鑑賞する伝統的な行事です。日本の秋は湿気が少なく空気が澄んでおり、また月の高度がちょうどいい位置にあるため、最も美しく見えるとされています。
お月見の文化は平安時代(794年~1185年)に中国から伝来したと思われ、最初は貴族に親しまれた風雅な娯楽でしたが、江戸時代(1603年~1869年)に入ってから庶民の間にまで広まり、神様に豊作への祈りと感謝の気持ちを捧げる行事として定着しました。
お月見のチャンスは3回もある?
「お月見」といえば中秋の名月と呼ばれる「十五夜」が最も広く知られていますが、実はその翌月と翌々月にも美しい月を鑑賞するチャンスがやってきます!
旧暦8月15日:十五夜
最もよく知られている月見行事で、満月を鑑賞する「中秋の名月」として親しまれています。稲の収穫期にあたるため、豊作を祈願し、稲穂やすすきなどを供えてお月見をします。
旧暦9月13日:十三夜
十五夜の約1か月後に行われる月見で、「後の月」とも呼ばれます。この日は栗や豆の収穫を祝うため、「栗名月」や「豆名月」といった別名もあります。十三夜の月は満月ではなく、少し欠けた月を楽しむのが特徴です。
旧暦10月10日:十日夜
秋の収穫を締めくくる行事で、稲刈りが終わった後、田の神様を山へお帰しする儀式として行われます。
十日夜の風習があるのは関東地方や甲信越地方を中心とした東日本のみで、地域によって内容は異なりますが、お餅を搗いたり、かかしを祀ったりなどの行事が行われます。
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月見団子
月見団子は日本の伝統的な和菓子であり、秋の収穫に対する感謝の意味や次の季節の豊作を祈る意味などを込められた供え物でもあります。
米粉で作った団子を供える習慣は江戸時代から定着し、当時の人は供えた月見団子をいただくことで、月と農耕の神である月読命から力を分けてもらい、健康と幸せが手に入ると信じていました。
こんなに違う?関東、関西とその他地域における月見団子の特徴
月見団子は全国的に「白い丸形」が主流ですが、地域によって形や供え方が違うものもあります。
色 | 形 | 供え方 | 別名 | |
関東 | 白 | 丸型 | ピラミッド型に積み上げる | ― |
関西 | 白(外側にこしあんを巻く) | しずく型 | 一つずつ並べる | ― |
名古屋 | 3色(白、ピンク、茶色) | 里芋型 | 一つずつ並べる | ― |
静岡 | 白 | くぼみのある丸型 | ピラミッド型に積み上げる | へそもち |
中国・四国 | 白(こしあん、きなこ、みたらし) | 串に刺すタイプ | 一本ずつ並べる | ― |
沖縄 | 白(表面に小豆がまぶされている) | 小判型、俵型 | ピラミッド型/一つずつ並べる | 吹上餅(フチャギ) |
月見そば
月見そばは温かいそばに生卵を落とした料理です。「月見」という名前は卵黄が満月のように見えることからきていますが、他にも固まった白身を雲に、卵の下に敷かれた海苔を夜空に見立てているのが特徴です。
そのまま食べても美味しいですが、つゆの熱で少し固まりかけた状態で食べることも多く、卵が崩れて黄身が広がるとつゆと絡み合い、まろやかな味わいが楽しめます。
そばが普及したのは江戸時代後期のことですが、当時の卵は高価な上衛生面の懸念もあり、生の状態で出すのが難しかったため、月見そばが食べられ始めたのは明治以降だったと言われています。
栗ご飯
「中秋の名月」である十五夜が主に稲の収穫を祝うのに対し、十三夜では栗の収穫を祝います。そのため、十三夜は「栗名月」とも呼ばれ、栗を供えるのが風習として伝わってきました。
この時期に収穫される栗は秋の実りを象徴する食材であり、お供えした後にお米と一緒に炊けば美味しい栗ご飯が出来上がります。
栗の実は外側の分厚い「鬼皮」と内側にある「渋皮」に覆われており、下処理作業が大変なため、時短で作りたい場合は甘露煮や冷凍栗で代用するのもおすすめです。
けんちん汁
けんちん汁は日本の伝統的な汁物料理の一種です。主に精進料理として知られており、動物性の食材を使用せずに作られるのが特徴とされています。
具材を油で炒め、出汁(昆布やしいたけ出汁が一般的)で煮込み、醤油や味噌で味付けしたら完成です。汁は透明感のあるものが多く、具材の旨味がしっかりと感じられる温かく優しい味わいとなっています。
地域や家庭によっては、少し異なる材料や調理方法が用いられることもありますが、基本的には野菜を豊富に使ったヘルシーな料理として親しまれています。
けんちん汁には秋の収穫物が多く含まれており、現在でも一部の地域では十五夜の日にけんちん汁を食べる風習が残っています。
主な具材
- 大根やにんじんなどの根菜類
- ごぼう
- こんにゃく
- 豆腐
- 椎茸やしめじなどのきのこ類
- 里芋(またはじゃがいも)
月見バーガー
月見バーガーは日本の伝統行事と現代の食文化が融合して生まれた商品であり、季節の移ろいを感じさせてくれる「秋の風物詩」として近年定着しつつあります。
月見バーガーが初めて登場したのは1991年で、当時は秋の季節感を出した新商品として開発されましたが、名前や見た目のインパクトもあって話題になり、発売以来秋の定番商品として幅広い世代に支持されています。
飲食チェーン店による「月見戦争」が年々白熱化し、その影響もあり秋になると卵の価格高騰傾向が強いため、最近卵の代わりにパイナップルやマッシュルーム等が使用された商品も登場し、従来の月見バーガーと一線を画しています。
今ではライフスタイルの変化や娯楽の充実化により、月を愛でる風習が徐々に薄れてきてしまっていますが、今年の中秋は空を見上げて、上記ご紹介したグルメを楽しみながら月を眺めてみてはいかがでしょうか。
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