【日本文化】東京はいつできた?「東京の日」と「都民の日」の違いは?成り立ちや命名、歴史まとめ

東京の日


東京――改めていうまでもなく、日本最大の都市です。国会や首相官邸、最高裁判所といった政治の中枢、のみならず証券取引所や日本を代表する大企業の本社が置かれるなど、政治、経済ともに日本の中心となる場所となっています。また、カルチャーの分野においても今日、国内外を問わず多くの人に親しまれている、秋葉原の「オタク文化」や渋谷の若者文化など、新しい文化の発信地と言える場所でもあります。2023年8月時点で東京都の人口は約1,400万人とされており、これは日本の人口の一割以上を占める数となっています。

今回の記事では、そんな東京の記念日「東京の日」について、定められた経緯や歴史的背景をご紹介していきます。

「東京の日」が定められた理由

東京の記念日である「東京の日」は、7月17日とされています。まずは、この記念日がなぜ7月17日とされたのか、その経緯についてご紹介しましょう。

「東京の日」が制定された経緯

東京の日

なぜ7月17日が「東京の日」なのか。その理由は単純で、「東京」が始まった日だから、というものです。実は、1868年の(旧暦の)7月17日、当時の天皇であった明治天皇の詔勅(天皇の発する公式文書)によって、「江戸」と呼ばれていた街が、現在お馴染みの「東京」という名前に改称されたのです。

この「東京」への改称について記された公式文書では、次のような定義が確認できます。①江戸は東日本の大都市で、東西南北からいろいろなものが集まる場所で、天皇自らがその政治をみることが適切であること、②よって天皇が国内すべてについて東西を同一に見ることができるため、それ以降「江戸」を「東京」と呼び改めることが、ここでは述べられています。

東京」と江戸城

東京の日

こうして、徳川家康が1603年に幕府を開いて以来、長らく政治の中心であった江戸は、この1868年に「東京」と名を改めたのでした。その後、段階を経て明治天皇は、京都から東京へと居を移すことになります。この場所こそ、現在も東京の中心部に位置する、「皇居」と呼ばれ多くの方に親しまれている場所です。ご存じの方も多いことですがこの場所は江戸時代、幕府の中心であった「江戸城」の置かれた場所だったのです。

西郷隆盛像
上野公園にある西郷隆盛像

江戸時代の終わりから明治時代のはじめ頃にかけて、日本全国では旧幕府軍と新政府軍の戦い(戊辰戦争)が行われていました。当時、幕府の中心があった江戸も、この動乱の中で戦火に包まれる危機に直面しました。しかし、このときになされた旧幕府と新政府側の和平交渉によって、この江戸城は「無血開城」され、新政府側に明け渡されることで、江戸の市街地を巻き込んだ大規模な戦闘は回避されたのです。この交渉に際して、新政府側に立って大きな役割を果たしたのが、現在上野公園にある銅像でも親しまれる明治維新の立役者・西郷隆盛でした。

もう一つの記念日:「都民の日」とその関連イベント

東京の日

「東京の日」にちなんで開催されるイベントの情報は特にありません。ただしこれとは別に、東京に関する記念日として、東京都では「都民の日」なる記念日が10月1日に制定され、この日にちなんだイベントが開催されています。ここでは、この後者の記念日の制定理由とイベントの情報をお届けします。

「都民の日」が10月1日に制定されたきっかけとなった出来事は、明治時代とされています。当時の東京市は、法令によって自治が制限されている状態にありました。しかし、「市民の市政参加の道を広げようとする運動」によって1898年、この法令が廃止され、この年の10月1日には、一般の市と同じく市長を持つ東京市が誕生したのでした。その後1922年に、「東京の歴史に学び、自治の大切さを自覚する日」として、10月1日が「自治記念日」に、そして1952年には「自治意識を高め東京の発展と都民の福祉向上」を目指して「都民の日」と定められたとされています。

浜離宮恩賜庭園
浜離宮恩賜庭園

この「都民の日」に併せて、2023年には施設の無料公開や記念行事が行われています。入園料や観覧料が無料の施設は、浜離宮恩賜庭園や小石川後楽園などの庭園、葛西臨海水族園や恩賜上野動物園 などの動物園や植物園、江戸東京たてもの園 、東京都美術館、東京都庭園美術館、東京都写真美術館、東京都現代美術館といった美術館・博物館などです。また記念行事として、東京都水道歴史館では「歴史講座と史跡めぐり」、奥多摩 水と緑のふれあい館では「ビデオの上映」、水の科学館や東京都虹の下水道館では「記念品配布」が行われました。

おわりに:かつての「東京」を体験する

東京の日

ここまで、「東京の日」の由来に関する明治時代の歴史、およびもうひとつの記念日である「都民の日」とこの日のイベント情報についてご紹介してきました。最後に、明治以降の東京の歴史について楽しみながら学ぶことのできる方法をご案内しておきましょう。

何よりもまず、江戸時代から東京と呼ばれて現在に至るまでの文化を学び、雰囲気を体験するために訪れたいのが、東京都墨田区にある「東京江戸博物館 」です。江戸時代の街並みを再現した展示から、明治以降の「東京」での市民文化の様子まで、その歴史を多くの資料とともに学ぶことができます。

残念ながら記事執筆時点では全館休館中(2025年度までの期間で改修工事が予定)のため、この期間は館内の展示を見て回ることができません。ただし、博物館の公式サイトでは、「江戸東京博物館バーチャル・ミュージアム 」として、休館前の展示室の様子を体験できるコンテンツも用意されています。気になる方はこちらを覗いてみてはいかがでしょうか。

ぜひ今すぐ実物を見てその雰囲気を味わいたい、という方におすすめしたいのは、東京都小金井市の都立小金井公園の中にある「江戸東京たてもの園 」です。ここでは「江戸時代前期から昭和中期までの文化的価値の高い歴史的建築物」が移築されており、それぞれの時代の生活の様子を実際に見て、学ぶことができる施設になっています。都心からは少し離れた場所に位置していますが、実際に触れて体験したいという方はもちろんのこと、特に建築に興味のある方におすすめの施設です。

ここまで東京に所在する展示施設についてご紹介しましたが、東京になかなか足を運ぶことが叶わないという方は、明治時代を舞台にした小説から「東京」の雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。たとえば文豪・夏目漱石の作品で東京が舞台となっているものであれば、東京の大学へと進学した若者が主人公の小説『三四郎』 はもちろん、日本では高校の現代文の教科書でもお馴染みの『こころ』 では、登場人物たちが、明治時代の東京を歩く様子も描かれています。ちなみにこれらの作品は、現在ではパブリックドメインとして、ウェブ上でも公開されています。ウェブの翻訳は必要ですが、当時の雰囲気を味わう資料として読んでみましょう。

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