北陸地方の「福井県」には最近、「日本100名城」に選ばれた丸岡城と一乗谷城のほかに、注目を集めているお城があります。それは、スタジオジブリ作品「天空の城ラピュタ」を彷彿とさせる、天空の城「越前大野城」です。
越前大野城 - 織田信長から与えられた土地に築かれた城
越前大野城があるのは福井県大野市。9世紀から10世紀ごろ、越前国に置かれた6群の一つ大野郡にあたります。その後1575年、織田信長はこの大野郡の土地を二人の武将に与えました。その一人、金森長近は大野郡の3分の2の土地を受け取り、翌年標高約249mの亀山に越前大野城を築き、その東側に城下町を建設しました。
越前大野城は、亀山の頂上に約4年をかけて築城され、政治の中心地となりました。しかしながら、1871年に実施された「廃藩置県」に伴い、大野藩は廃止されました。また、1873年に頒布された「廃城令」により、越前大野城は取り壊され、石垣のみが残されることになりました。一部の建物は他の場所に移築されましたが、本丸は入札によって商人など20人以上に払い下げられました。290年の歴史を持つ越前大野城は、ここで一旦幕を下ろしたのです。
焼失、解体工事を経て再建された越前大野城の城郭
実は、廃城令により取り壊された越前大野城は、もはや金森長近が築いた最初の城ではありませんでした。なぜならば、江戸時代には火災が頻発しており、越前大野城も1775年に大火事に見舞われたためです。この火災によって本丸の建物まで焼失してしまいました。その後1795年にようやく本丸が再建されたものの、その後「廃城令」によって解体されました。
現在の天守閣は1968年、大野市の旧士族である萩原貞の寄付によって、再建されたものです。再建された越前大野城は、初代の越前大野城や当時の絵図を参考にして復元されました。天守は現在資料館として利用されており、歴代城主の資料などが展示されています。天守に登って周囲の景色を楽しむこともできますよ。
越前大野城は貴重な野面積み石垣を持つ「続日本100名城」のひとつ
現在も、本丸の近くの石垣に、初期のお城の面影が窺えます。この石垣は、「野面積み」という技法で築かれました。この技法は、ほとんど加工されていない自然石を積み上げていくというもので、「最も古い年代に現れた積み方」と言われています。
越前大野城の石垣は、この野面積みで築かれたもので、見どころのひとつとなっています。1576年に織田信長が築城した「安土城」は、日本史上初めて10メートル以上の高い石垣に囲まれたお城として知られています。越前大野城は安土城と同じ年に着工され、石垣が築かれたことから、金森長近と織田信長との親密な関係を示す証拠とされています。
また、越前大野城は2017年に「続日本100名城(*1)」に選定され、城下町とともに古き良き雰囲気を残す観光スポットとして人気を集めています。
*1:「優れた文化財・史跡であること」、「著名な歴史の舞台であること」、「時代・地域の代表であること」を選定基準とし、公益財団法人 日本城郭協会が50年周年を迎える2017年に新たに制定した日本の名城リストのこと。
越前大野城は北陸地方の天空の城
珍しい野面積み石垣や昔ながらの城下町の越前大野城。そして、そのもう1つの魅力は限られた時期、限られた気象条件でしか見ることができない雲海に浮かぶ様子、天空の城」とも称される絶景です。
越前大野城は、兵庫県の「竹田城跡」と岡山県の「備中松山城」とともに、「日本三大『天空の城』」と呼ばれています。雲海は、盆地に発生しやすく、山頂からはその景色を見下ろすことができます。雲海が発生した際に、遠くから見ると、城が、空に浮かぶ幻想的な「天空の城」のように見えるのです。そのため、お城好きや写真好きの人々にとっては、一度は訪れておきたい絶景スポットです。
「天空の城」の絶景を満喫するには、「雲海」が必須の条件です。越前大野城で雲海が見られる期間は、毎年10月から翌年の4月末頃までで、毎日の明け方から午前9時頃までです。ただし、雲海が発生するかどうかは、その日の天気に左右されます。
遠くから城を眺めたいなら、越前大野城から約1km離れた犬山にある「戌山城跡」がおすすめです。しかし、戌山城跡までたどり着くには、最寄りの駐車場からでも登山道を30分ほど登る必要があります。登山用の服装をお忘れなく!
越前大野城
- 住所:福井県大野市城町3-109
- 開館時間:
4月~9月 09:00~17:00
10月~11月 09:00~16:00 - 休館期間:冬季(12月1日~3月31日)
- 入館料:300円(中学生以下無料)
- アクセス:JR越前大野駅から徒歩約30分。または、JR越前大野駅から京福バスで大野六間バス停下車後、登城口まで徒歩約8分。登城口から後越前大野城までは徒歩約10~20分
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