――日本語能力試験(JAPANESE-LANGUAGE PROFICIENCY TEST、略して「JLPT」)。
日本語を勉強している人なら、その名を知らない人はいないだろう。例年7月及び12月に世界各国で行われる、日本語を母語としない者を対象とした日本語能力を測定・認定する試験だ。
多くの日本語学習者が難しいと感じている試験は、果たしてネイティブの日本人から見ても難しいのか?検証すべく、今回はFUN! JAPANのメルマガでも日本語を教えている乱入先生に日本語学習コンテンツの中からJLPTと同難易度の問題に挑戦してもらうことに。先生がJLPTの問題例を解いてみた感想とは...?
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日本語能力試験(JLPT)とは?
JLPTという試験の名前を聞いたことのない人や日本語学習初心者のために、まずは試験の基本について説明しよう。
「日本語能力試験(JLPT)」には、N1・N2・N3・N4・N5と5段階のレベルがあり、レベルごとに選択問題が作られている。日本語の文字や語彙、文法に対する知識を測定するための「言語知識(文字・語彙・文法)」に加え、「読解」及び「聴解」という3つの要素で構成され、一番易しいレベルがN5で、一番難しいレベルがN1だ。
国際交流基金及び日本国際教育支援協会が発表した2021年第2回(12月)の試験のデータから見ると、国内・海外合計のN5は認定率が62.3%に対して、N1は認定率がわずか34.5%だ。N1及びN2の認定率はどちらも40%程度に留まるが、日本企業にはN2以上の日本語能力を必須応募条件とする会社が多いほか、日本の医師等国家試験をはじめ、日本の国家試験を受験するためにはN1の認定が必要とされるので、認定者は就職活動や転職活動をする際に様々なメリットが得られると言えるだろう。ちなみにFUN! JAPANの外国籍メンバーはほとんどN1の認定を持っているよ。
日本人がJLPTの問題例に挑戦してみた!
さて、今回問題に挑戦するのは、当サイトにおいて登場頻度が日に日に高まる乱入先生だ。先生はなんと東京の名門私立大学、慶應義塾大学の卒業生なんだという。JLPTの存在はFUN! JAPANに入社してから初めて知ったそうで、もちろん問題を解くのも今回が初めてだそうだが、日本人にとっては小学校高学年レベルの日本語が問われるN3とN2レベルの問題を間違えるわけにはいかない!
これからJLPTを受ける予定のある読者がいれば、ぜひ復習がてらに出てくる問題を解いてみてね。各設問の正解は文末で確認できるよ。(ここからは一部の問題例を抜粋してお届けする)
本番の試験と同様に、「漢字読み」、「表記」、「用法」と様々な形式から出題。
「N3レベルの問題は日本でいうと、小学校3年生ぐらいのレベルかな?前の文章との繋がりとか、助詞の使い方がポイントな気がする。」
問題例①(N3レベル)
| 地下鉄で()しています。家から会社まで30分です。
- 通勤(つうきん)
- 通学(つうがく)
- 通行(つうこう)
- 通院(つういん)
「国語の授業で教科書に出てくるような、似た熟語が4つ並ぶ引っ掛け問題だね。これは初心者なら間違えやすそうだね。」
問題例②(N2レベル)
| この場所は学校を建てるのにてきしている。
- 滴して
- 摘して
- 適して
- 敵して
「一瞬迷った問題というと、『適(てき)する』というこの問題。漢字がすごく似ているから、日本人でも間違えるかもしれないね。」
「漢字を使わない国の読者へのアドバイスは、フォルムで覚えろ!漢字の意味を感じろ!」(ちなみにN3に合格するには漢字600字・語彙数3,000個が目安で、日本の小学校で習う漢字数の1,026文字と比べて約半分と言われている。)
問題例③(N3レベル)
| 先日お求めになった絵が届きましたが、(ご覧)になりますか。
- 返しますか
- 見ますか
- 行きますか
- 確かめますか
問題例④(N2レベル)
| 事故で渋滞していた()ですから、到着が遅れてしまいました。申し訳ありません。
- こと
- ため
- だけ
- もの
「N2レベルはN3と比べて、言葉の使い方や文章の接続が難しくなっているけれど日常生活でも使う機会が多いと思うよ。」
「どれを選んでも文章としては成り立つから難しい印象だね。特に尊敬語や謙遜語は日本語初心者にとって判断しづらいと思う。」と言いつつ、日本のエリート校卒業生にとってはN3、N2レベルはさすがに楽勝すぎたよう。なんと、ここまで全問正解!
次は最難関のJLPT N1を!
次は最難関のN1レベルへ突入。ここからは言語知識に加え、読解にも挑戦。多くの日本語学習者をつまずかせた「ラスボス」を目の前にし、全集中の呼吸をしてチャレンジスタートだ!
問題例⑤
| 私の人生を、人から()言われる筋合はない。
- とやかく
- とかく
- とにかく
- ともかく
問題例⑥
| 20年ぶりに同窓会で会った彼女は、あの頃よりもずっときれいになっていて、驚きを()。
- 足らないものだった
- 禁じ得なかった
- 余儀なくされた
- 堪えなかった
「なかなか日常的に使わない表現がいろいろ出てきたね。『とやかく』なんかは人生で一回も使ったことがないし、『驚きを禁じえなかった』も今日はじめて聞いた。まるで小説を読んでいるみたいだ。」
とその時!ここまでどや顔で問題例を解き続けてきた乱入先生を悩ませる難関がここで出現――★に入る最も良いものを選ぶ「文の組み立て」という形式の問題だ。
問題例⑦
| 指揮者の父とピアニストの母の間に生まれた彼女は___ ___ ★ ___ あり。すばらしいヴァイオリン演奏に感動せずにはいられない。
- にして
- この子
- まさに
- この親
「『この親にしてこの子あり』は普通言わないと思うし、『この親にしてまさにこの子あり』と会釈もできるし。ドラマのセリフとかでしか聞かないような表現だよ。(笑)」
問題例⑧
| 首相の被災地での自分勝手な言動は、政治家として___ ★ ___ ___を得なかった。
- 大問題になって
- 辞任せざる
- 行為であって
- あるまじき
「順番が変わると意味も変わってくるのでややこしいよね。正解できるかどうかは運次第じゃない?(笑)」
一山越えてまた一山。次に名門大学卒を待ちうけていたのが聴解だ。
1回しか再生されない録音を聞き、選択肢からその内容に最もふさわしい答えを選ぶ。初めは腕組みして自信満々だったのに、録音をきいているうちに表情が段々と暗くなっていく…(音声があるため残念ながら問題はお見せできません)
「これも結構難しいね。話す速度は普通の日本人よりも少し早いから、日本人でも聞き逃すと思うよ。聞きながらメモを取らなければいけないし、聞き取りがしっかりできないと、勘違いして間違えやすい。」
さすがの名門大学卒もこの表情。日本人から見ても、やはりN1レベルは難しいようだ。
後記:日本人はJLPTの問題例についてどう思う?
頭をフル回転させて今回のチャレンジに臨んだ乱入先生。挑戦してみた感想は?
「JLPTの試験は日本人こそ受けるべきだ(笑)。外国人と話す時に、もっと日本語の語順を意識しなければならないと思ったし、日本語を見直す機会にもなった。」
改めて日本語の難しさを痛感した乱入先生。今後読者の皆さんと一緒に日本語を勉強する仲間になる日が来るかも!?
今回出題した問題の正解はこちら!
問題例 | 正解 | |
① | 地下鉄で()しています。家から会社まで30分です。 | 1. 通勤(つうきん) |
② | この場所は学校を建てるのにてきしている。 | 3. 適して |
③ | 先日お求めになった絵が届きましたが、(ご覧)になりますか。 | 2. 見ますか |
④ | 事故で渋滞していた()ですから、到着が遅れてしまいました。申し訳ありません。 | 4. もの |
⑤ | 私の人生を、人から()言われる筋合はない。 | 1. とやかく |
⑥ | 20年ぶりに同窓会で会った彼女は、あの頃よりもずっときれいになっていて、驚きを()。 | 2. 禁じ得なかった |
⑦ | 指揮者の父とピアニストの母の間に生まれた彼女は__ ___ ★ ___あり。すばらしいヴァイオリン演奏に感動せずにはいられない。 | 1. にして |
⑧ | 首相の被災地での自分勝手な言動は、政治家として___ ★ ___ ___を得なかった。 | 行為であって |
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