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中部地方の中心都市・愛知県と言えば、まず頭に浮かんでくるのは、政令指定都市の名古屋市でしょう。そして、それに続いて「観光地としての名古屋は面白いかどうか」についての論争が始まるに違いありません。にもかかわらず、誰も否定できないのは、「愛知県のグルメ」。今回は、日本好きの皆さんにも人気の「愛知グルメ」を紹介します!
「B級グルメ」とは?
日本では、その都道府県を訪れたら誰もが食べるような定番グルメのほかに、同じ都道府県でも、エリアごとに地元民のソウルフードとなっているご当地グルメ「B級グルメ」が存在します。「B級グルメ」とは、華麗なテクニックやデコレーションはいっさい使わず、地元の食材で調理し、地元の人々に親しまれる、究極のローカルフードのことです。
おいしさの秘密

関東の醤油文化、関西の出汁文化と異なり、愛知グルメのおいしさの秘密は、長期熟成された濃厚な豆味噌「八丁味噌」を食べる文化にあります。八丁味噌の発祥地は旧名「八丁村」、現在の愛知県岡崎市八帖町です。
八丁村で生産される味噌の誕生は南北朝(1337~1392年)に遡ることができ、安土桃山時代(1568~1603年)には味噌作りを行っていたそうです。その後、江戸時代に、岡崎城から西へ八丁(約870m)の距離にある八丁村で、2軒の味噌蔵(まるや八丁味噌、カクキュー)が造っていた豆味噌のことを、地名から「八丁味噌」と呼ぶようになり、以後その2軒が商標として八丁味噌を使い続けています。
江戸時代(1603~1867年)、南北の矢作川と東西の東海道が交わる水陸交通の要所である岡崎市は、原料となる大豆や塩を入手しやすく、矢作川の良質な湧水や温暖な気候など、味噌づくりに最適な立地条件を揃えて、八丁味噌の生産もますます伸びていきます。
一方、八丁味噌は岡崎出身の徳川家康の大好物だそうです。徳川が天下を取って、江戸(現在の東京)を本拠にしたとともに、八丁味噌も東海道に沿って関東に進出し、一躍して全国的に有名となりました。
愛知のB級グルメ
今回、紹介したいのは有名な「ひつまぶし」や本番台湾にはない「台湾ラーメン」(名古屋で台湾料理屋さんを経営する台湾人が考案したもの)のような辛い麺料理ではなく、味噌の旨味がじっくりと味わえる料理や地元の人に愛されているB級グルメです。
味噌カツ
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まず最初は、愛知の味噌グルメの象徴、「味噌カツ」です。サクサクに揚げた豚カツにかけた黒に近い茶色の味噌ダレは、八丁味噌で作ったものです。店ごとに八丁味噌に砂糖や出汁を加えてたりしてじっくりと煮込みこだわりのタレを作るので、店ごとにそこでしか食べられない味噌ダレが楽しめます。
八丁味噌の特徴は黒に近い濃い色味ですが、実は色だけではなく味も濃厚です。豚カツと一緒に口に入れると、八丁味噌独特の大豆の風味と酸味がよりいっそう楽しめます。味噌カツの由来について、諸説あり「串カツをどて鍋のタレにつけて食べてみたところ、おいしかった」など、どれも八丁味噌のおいしさを表しています。
味噌おでん
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ご存知の「おでん」は出汁で煮込んで、食べる際、好きな具材を小皿に移し、自分の好みで出汁やカラシをつけて食べます。しかし、愛知でおでんにつけるのは、やっぱり味噌ダレです。よくあるのは、おでんの具材が入った土鍋の真ん中に、八丁味噌ベースの味噌壺を置くという食べ方です。
そして、もう一つの調理法は、おでんの具材を直接に味噌出汁に入れる調理方法。味噌の濃厚な旨味が食材の奥までしみ込んで、見た目も八丁味噌のような濃い茶色となります。
どで煮
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味噌おでんと同じ、食材を濃厚な味噌出汁でじっくりと煮込んだ料理です。主な食材はモツですが、こんにゃくやゆで卵を入れる店もあります。味噌の旨味が食材にしみ込んだどて煮は、愛知の居酒屋で欠かせない一品です。
小倉トースト
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味噌のほかに、愛知県でのもう一つの食文化は「朝食」です。名古屋市内の喫茶店やコーヒーショップでコーヒーを注文すると、なぜかトーストやゆで卵などがサービスでついてきます。これこそ名物の「モーニングサービス」!
そして、名古屋のモーニングでぜったいおすすめなのが小倉トーストです。焼きたてのトーストに、バターとたっぷりなあんこをのせる小倉トーストは老若男女問わず大人気。この食べ方は、1921年(大正10年)頃、喫茶店「満つ葉」のオーナーが、学生客がぜんざいにトーストをつけて食べていたことにヒントを得て、誕生したといわれています。
エビフライ
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愛知県南部にある三河湾は全国有数の車エビの産地。愛知県民もエビは大好きで、お祝いには海老料理も欠かせません。中でも、エビフライは地元の人にとっては最も親しみのあるおかずです。喫茶店、洋食屋、居酒屋だけではなく、エビフライ食べ放題専門店さえもあります。
エビフライの知名度を一躍押し上げたのは、お笑いタレント「タモリ」は、テレビ番組で「エビフライ」の名古屋弁語尾発音を茶化したからです。実は名古屋での呼び方は、ほかの都道府県とはほぼ変わらないです。しかし、これをきっかけとして、エビフライ=名古屋、または愛知名物というイメージが日本中に広まりました。
玉せん
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エビせんべいにソースを塗り目玉焼きやスクラングルエッグのせて、二つに折ったB級グルメ「玉せん」。これは、愛知県のお祭り屋台や駄菓子屋でよく見られるおやつです。また、焼きそばやたこ焼き入りのスペシャルバージョンもあります。
半熟卵と普通のせんべいを使った関西名物の「たまごせんべい」と違って、「玉せん」は程よく火が通った目玉焼きを挟んだエビせんべいです。
また、「たまごせんべい」の誕生はプラスチック製容器包装減量のためですが、愛知県の玉せんは「焼いたせんべいを食べたい」という子どもの願いと「目玉焼きとは意外に合う」という発想から生まれたおやつだそうです。
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