「北海道3.6牛乳=おいしい牛乳」、「A5ランク和牛=おいしい肉」なんて思い込んでいませんか?

スーパーで、「北海道3.6牛乳」や「A5ランク和牛」といった商品を誰もが一度は目にしたことがあるだろう。なんとなく「良いもの」とは分かるものの、実際どこが良いか、あなたは言えますか?良い食べ物に出会えるかは運に加えて、これらの数字の裏に隠された意味を知っているかどうかにもよるのです。

「3.6牛乳」と「4.0牛乳」の差は何?「A5和牛」は「A4和牛」よりおいしいの?

これらの意味をマスターしておけば、買い物の成功率がぐっと上がり、家族や友達から一目置かれることだろう。

疑問1:「北海道3.6牛乳」の「3.6」って何の数字?

「北海道3.6牛乳」のほか、「種子島3.6牛乳」も日本のスーパーで高い人気を誇っている。

日本の牛乳の商品名でよく目にする「3.5」、「3.6」という数字。数字が大きいほど、濃厚かつ高級というイメージを持つのは筆者だけではないはず。しかし、実は数字が高いほうが良いかというと、そうでもないのだ。

これは「牛乳に含まれる脂肪分の割合」を示している数字で、言い換えれば牛乳の栄養分のひとつである脂肪分の比率を表したもの。「3.6」なら牛乳100g中に脂肪分が3.6g以上ある、「4.2」なら牛乳100g中に脂肪分が4.2g以上ある、という意味。

一般的で言う市販の「牛乳」を細かく分類すれば、主に下記の6種類に分かれている

  1. 牛乳(成分無調整牛乳):
    生乳100%。殺菌してからそのまま詰めた牛乳(水などを加えることは法令で禁じられている)
  2. 成分調整牛乳:
    生乳100%で水分、乳脂肪分またはミネラルなどの成分を調整しているもの。
  3. 低脂肪牛乳:
    成分調整牛乳のうち、乳脂肪分が0.5以上、1.5%以下に調整したもの
  4. 無脂肪牛乳:
    成分調整牛乳のうち、乳脂肪分が0.5%未満に調整したもの
  5. 加工乳:
    生乳に乳製品(脱脂粉乳・バター・クリームなど)に加えて、濃厚タイプや低脂肪タイプにしたもの
  6. 乳飲料:
    生乳や乳製品を主原料に、乳製品以外(ビタミン・コーヒー・果汁など)を加えたもの(「特濃」、「濃厚」とうたう商品が多い)

「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」により、種類別1.の「牛乳」の乳脂肪分は「3.0%以上、生乳100%、成分無調整で乳脂肪分3.0%以上、無脂乳固形分8.0%以上」と決められている。例えば乳脂肪分3.6%以上であれば、商品名を「3.6牛乳」とつけることは可能だ。でも「乳脂肪分多いほどおいしいの?」と聞かれると、そうとは限らない。

乳脂肪分が高ければ高いほど、牛乳にコクが増し、芳香をより強く感じるが、乳牛の飼料や育つ季節、または生産過程における殺菌温度と時間の長短なども味に影響する要素。次回買い物に行くとき、もう数字に惑わされて選ぶなんてことから卒業しよう。

疑問2:「A5ランク和牛」の「A5」って何の意味?

和牛を食べる際、多くの人は「A4」、「A5」といったランクを基準に肉質を参考にしているだろう。「A5ランク=おいしい」と思い込んでいる人も多いのでは?

だた、これは決しては味の良し悪しを表すランクではなく、日本食肉格付協会が1961年に「牛枝肉取引規格」に基づき、「歩留等級(アルファベット)」と「肉質等級(数字)」の2つの評価を総合して合計15段階で肉質を格付けしている価格形成の基準だ。

「歩留等級(ぶどまり)」とは、「枝肉(*1)から得られる部分肉(*2)の割合」のこと。「食べられる部分」の量を、A~Cの3段階(高いものがA、低いものがC)で評価している。枝肉から食べられる肉が多く取れるほど、歩留等級が高いというわけだ。一般的に和牛はAランク、和牛以外の肥育牛がBランクと言われている。

*1:枝肉:牛の体から、皮や骨、内臓などを取り去った肉のこと。
*2:部分肉:枝肉から骨、余剰脂肪、くず肉などを除いた肉のこと。ネック、肩ロース、リブロース、サーロインなど、計13部位がある。

一方、「肉質等級」とは、文字通り肉の質を格付けしているもの。評価項目は「脂肪交雑(霜降り状態)」、「脂肪の色沢と質」、「肉の締まりとキメ」と「肉の色沢」の計4項目をそれぞれ5~1(高いものが5、低いものが1)で評価。ここで注意してほしいのが、「肉質等級」は平均値を取るのではなく、その中の最も低い評価が肉質等級となるということ。

例をあげると、

評価項目等級

肉質等級
脂肪交雑
5

肉の色沢
33
肉の締まりとキメ
4

脂肪の色沢と質
3

上記の判断基準から分かるように、牛肉の格付けは「味」ではなく、あくまで「見た目」ということだ。意外でしょ…?肉を購入する際、肉色の鮮やかさや肉表面の食感を基準に選ぶのも1つの手だが、飼料や飼育環境も肉質に影響を与えているということもお忘れずに。

「糖度が高い=果物が甘い」も大間違いだ!

食べ物に関する格付け基準は、まだまだある。果物の甘さを表す際に使われる「糖度」もその1つだ。フルーツコーナーのポップによく書かれている「糖度○度(以上)」という表現。これも数字が高いほど、良い(甘い)と思い込んでいませんか?

糖度とは、「水に溶けている固形分」の量の指標のこと。あらゆるの糖分(ブドウ糖、果糖、ショ糖 など)を含め、塩分や酸も「固形分」に含まれるため、糖度が示しているのは、味の甘さではなく濃さということになる。(「Brix値」が糖度の測定値の単位)

農林水産省が発表した「果樹をめぐる情勢(平成26年6月)」によると、一般的な果物は糖度は下記の通りだ。

果物糖度
酸度
オレンジ
10.3%
1.2%
りんご
15.0% 
0.4%
バナナ
21.0% 
0.5%

同じ糖度12のリンゴ(A&B)が2つあるとしよう。Aに含まれるクエン酸が3%、Bに含まれるクエン酸が10%の場合、糖度が同じだとしてもBのほうが酸っぱく感じることだろう。また、違う果物(例:リンゴVSレモン)で比較しても、そもそも両者の成分が異なるため、どちらが甘いかは糖度を見るだけでは簡単に言い切れない。

糖の種類によって甘さは違うし、酸の量によっては甘さの感じ方も違ってくるので、味を重視する人は全体的な「糖酸比(甘味比)」を考えたほうが良さそうだ。

分かりやすくまとめると:何回も買ったことのあるリンゴが、ある日突然糖度が爆上がりするとしたら、買い時だ! 

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