【日本名城シリーズ】徳川御三家である水戸徳川家の居城「水戸城」

茨城県水戸といえば、「水戸黄門」の話を想起する人も大勢いるでしょう。日本で高い知名度を誇っている「水戸黄門」とは、江戸時代水戸藩の第二代藩主である「徳川光圀」のことです。「水戸黄門」という呼び名は、光圀は中納言(別名は「黄門侍郎)に任命されていたためです。今回、FUN! JAPAN編集部は、水戸城について詳しく紹介します。

徳川御三家の一つである「水戸徳川家」

高い知名度を誇っている「水戸黄門」は、江戸時代水戸藩の第二代藩主である「徳川光圀」です。

徳川御三家とは、「尾張徳川家(愛知県)」、「紀州徳川家(和歌山県)」と「水戸徳川家」の三家のことを指します。御三家は、徳川幕府とは親族関係を持つ大名であり、最初に徳川家康が指定した御三家は、徳川本家、尾張徳川と紀州徳川家です。また、徳川幕府を継ぐ将軍も、必ずこの三家から指名します。

当時、水戸徳川家の官位は、尾張徳川と紀州徳川より下でしたが、長年、江戸で将軍側近仕えて庶務に携わったため、世間では「副将軍」と呼ばれています。そして、家康の死後、御三家に名を連ねました。

水戸城は、日本最大級の土造りの城

水戸城で見学する時、皆さんの頭の中には、「御三家と呼ばれたのに、お城自体があまり目立たないのはなぜだろう?」という疑問が浮かぶかもしれません。

水戸城は、那珂川と千波湖に挟まれた台地に位置する平山城で、平安時代(794年~1184年)末から鎌倉時代(1185年~1333年)初期に建てられました。その歴史は、尾張徳川の名古屋城と紀州徳川の和歌山城より長いのです。元々、水戸城は馬場資幹氏が作った城でしたが、のちに佐竹氏などの手を経て、江戸時代に水戸藩の居城となりました。

この城を継いだ水戸藩の初代藩主・徳川頼房は、三の丸や外堀の整備拡張を行い、二の丸に御殿を造営、さらに三階物見と呼ばれる櫓を建設しましたが、天守を持つ名古屋城や和歌山城と比べて、見劣りするかもしれません。なぜかというと、立派な石垣がない代わりに、水戸城は大規模な盛土による堤防(土塁)と溝(堀)で城を守っているからです。また、水戸藩主はずっと江戸にいて水戸の居城に滅多に帰らなかったため、城の内装もわりと質素なつくりとなっています。

2020年復元整備が完了した大手門

水戸城は、2006年に「日本100名城」に選定されました。盛土による堤防(土塁)と溝(堀)は現存していますが、大型の建造物はほとんど第二次世界大戦で焼失しました。一方、現存する最も古い建築物の「薬医門」は、佐竹氏が城主だった時代(1590年~1602年)に建てられたもので、茨城県の指定文化財となっています。薬医門は、1981年に、水戸城本丸跡地である県立水戸第一高等学校敷地内に移築復元されました。ここでは、同じく復元された二の丸角櫓や大手門などとともに、かつての姿を偲ぶことができます。

観光情報

  • スポット名:水戸城跡(二の丸展示館所在地)
  • 住所:茨城県水戸市三の丸2-9-22
  • アクセス:JR水戸駅北口から徒歩約10分
  • 営業時間:9:00~16:00
  • 定休日:12月29日~1月3日

梅に囲まれた学術の殿堂「弘道館」

薬医門だけではなく、「弘道館」も戦災を逃れた貴重な建造物です。「弘道館」は1841年に水戸城三の丸内に建設完了し、1857年に開館しました。「烈公」と呼ばれる水戸藩第九代藩主である「徳川斉昭」が作った、当時日本最大の藩校です。その時の水戸藩の財政には余裕がなかったのにもかかわらず、大規模な藩校を建設しました。この点から、斉昭公は藩士の教育水準を引き上げようとする強い決意が伺えます。

弘道館の入学年齢は15歳から40歳までですが、卒業の要件をいっさい設けずに、生涯にわたってここで勉強することができました。文武両道の場となった弘道館では、儒学、礼儀、天文、数学、和歌などの学問だけではなく、剣道、兵学、鉄砲、馬術などの武芸も教えました。さらに、医学を学ぶ医学館も開設されました。江戸幕府最後の征夷大将軍である「徳川慶喜」もここで英才教育を受けました。


弘道館の正庁・至善堂・正門の建造物は国の重要文化財に指定された上で、2015年には「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源」として日本遺産に認定されました。

ここは、学術の殿堂としてだけではなく、梅の名所としても知られています。春になると、弘道館の構内に植えられた約800本の梅が咲き、芳ばしい梅の香りが漂います。

現在、水戸城跡の一帯は文教地区となっていて、本丸跡地内の水戸一高、二の丸跡地内の水戸三高、茨城大学教育学部附属小学校・幼稚園などが集まっています。弘道館を開設した烈公がこれを知ったら、感無量になることでしょう。

観光情報

  • スポット名:弘道館
  • 住所:茨城県水戸市三の丸1-6-29
  • アクセス:JR水戸駅北口から徒歩約8分
  • 開園時間:2月20日~9月30日 9:00~17:00
                       10月1日~2月19日 9:00~16:30
  • 定休日:12月29日~1月3日
  • 入園料:大人400円、小人200円、満70歳200円

ここも一押しです:偕楽園

藩校のほかに、烈公は日本三名園の「偕楽園」も作りました。「一張一弛」(気持ちを引き締めたり緩めたりすること)を主張した烈公は、学習に加えて適度な休憩も必要だと考えました。「一張一弛」の「張」は学習の場となった「弘道館」である一方、「弛」は休憩の場となった「偕楽園」ということになります。

広大な敷地に3000本の梅が植えられた偕楽園は、日本有数の梅の名所です。春の「水戸梅まつり」では、昼は梅に囲まれた千波湖の景色、夜は夜梅とともに花火が見物できます。梅の香りに囲まれて、それぞれの風情が感じられます。2022年には、アート集団チームラボと連携し、「チームラボ偕楽園 光の祭」を開催し、偕楽園の新たな魅力を引き出します。

観光情報

  • スポット名:偕楽園
  • 住所:茨城県水戸市常磐町1-3-3
  • アクセス:JR水戸駅北口からバスで約20分、「好文亭表門」、「偕楽園東門」、「偕楽園前」、「千波湖」から降りて、徒歩約5~10分。
  • 開園時間:2月中旬~9月30日 6:00~19:00
                       10月1日~2月中旬 7:00~18:00
  • 入園料:大人300円、子ども150円(本園以外一部入園無料、24時間開園)

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