日本人も知らない「肉の隠語」一覧。イチョウ肉とは?牛肉・豚肉・鴨肉・熊肉の別名

  • Nov 7, 2025
  • May 20, 2022
  • Jacky Wong

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――これはある日、編集部員たちが夜ご飯を物色している時に起きた出来事…

A:FUN! JAPAN新米エディター(来日歴1年)/B:FUN! JAPANベテラン日本人エディター)

A:なんか今日はお肉を食べたい気分だなぁ…

B:(目の前にある居酒屋の看板を指さしながら)ほら見て、今日の日替わりメニューは「桜肉」の定食だってよ。

A:えっ、日本人は「桜の花」を食べるの???

――もちろん、「桜の花」を食べるわけではありません。

奥深い日本語の世界では、日常的に聞きなれた単語が、実は全く別の意味で使われることがあります。「SAKURA」として、世界でも通じる「桜(さくら)」という言葉は、多くの場合「花」を指しますが、「肉」を表す場合もあります。

日本語猛勉強中の新米エディターであるAさんのためにも、日本語に興味津々なFUN! JAPAN読者のみなさんのためにも、今回は日本人でも知らない人が多い「肉の隠語」についてご紹介します。

※記事で紹介した商品を購入したり予約をしたりすると、売上の一部がFUN! JAPANに還元されることがあります。

肉に「隠語」が使われた理由:昔の日本では肉食が禁止されていた

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江戸時代の絵巻物

「隠語」とは、仲間同士でしか通じない言葉や言い回しのこと。日本では古くから肉食(にくじき)の習慣はあったものの、飛鳥時代675年に天武天皇が仏教の殺生禁止の戒律を受けて、牛、馬、犬、猿、鶏の肉食を禁止する「肉食禁止令の詔」を出して以来、平安時代(794〜1180年)・鎌倉時代(1180〜1336年)と肉食禁止が続きました。

さらに、封建社会の江戸時代(1600〜1868年)にも、江戸幕府5代将軍・徳川綱吉が「生類憐みの令」を発令して肉食を禁止。なんと、日本では約1,200年間に渡り、断続的に肉食を避ける文化が続いたのです。

一方、肉を提供するお店は肉食禁止令の対策として、お肉を「花」や「植物」の名前を使って客を呼び込み、こっそり肉を提供していました。

「肉の隠語」一覧。銀杏(イチョウ)肉は鴨肉のこと

肉の隠語の由来はそれぞれ諸説ありますが、一般的とされるルーツをいくつかご紹介します。ちなみに、隠語として単語を使う際は、漢字ではなく、ひらがな・カタカナで表現することが一般的です。

【馬肉】<桜肉 / さくら / Sa-ku-ra>

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  • 馬肉を切った時、赤身部分が鮮やかな「朱赤色・さくら色」であることから
  • 馬が冬の間に草や穀類をたくさん食べ、桜の咲く時期の馬肉が脂が乗っていて美しいことから
  • 幕府の直轄の牧場が佐倉地域周辺(現在の千葉県北部)にあり、「馬と言えば佐倉」だったことから

【鹿肉】<紅葉肉 / もみじ / Mo-mi-ji>

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  • 花札(日本のかるたの一種)において、紅葉と鹿が一緒に10月『鹿に紅葉』の絵柄で描かれているから

【鴨肉】<銀杏肉 / いちょう / I-cho-u>

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  • 銀杏の葉が鴨の足に似ているから

【猪肉】<牡丹肉 / ボタン / Bo-tan>

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  • 猪肉を切って皿に盛り付けるとき、「牡丹(ぼたん)の花」のように飾っていたから

【鶏肉】<かしわ / Ka-shi-wa>

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  • 鶏の肉の色が、茶色くなった柏の葉の色に似ていたことから 。
  • 鶏の羽ばたきが、神社で手のひらを打ち合わせて鳴らす「かしわ手」を打つ姿に似ていることから。

牛肉と豚肉の隠語は存在しない

このように「隠語」は江戸時代後にも慣用的に使われ、現代まで受け継がれています。

「あれ?鶏肉の隠語はあって、牛肉や豚肉にはないの?」

と思ったFUN! JAPAN読者のみなさん、鋭い指摘ですね!実は、江戸時代には牛肉、豚肉はほとんど食べられていなかったため、別の呼び名をつける必要はありませんでした。牛や豚を食べる習慣が普及し始めたのは、明治時代(1868〜1912年)以降。肉を堂々と食べられる時代だったので、こっそり呼ぶための隠語も必要ありませんでした。

肉の隠語が使われていた時代、肉を「薬」として売る店も

江戸時代の「生類憐れみの令」により、ビジネスを変更せざるを得ないお店もありました。そこで店主たちが思いついたのは、「薬屋」。当時の薬屋では、滋養強壮に効くということで獣肉を販売していたのです。

薬屋で売っている肉まで禁じてしまうと、人々の健康に影響を与えると考え、薬屋での肉の販売は幕府に黙認されていたそう。

熊肉の隠語は「やまくじら(山鯨)」

熊肉

さて、最近話題の「熊」ですが、熊肉にも隠語があることをご存じでしょうか?熊肉の隠語は「やまくじら(山鯨)」です。

これは、これまでご紹介した「桜」や「銀杏」のような花や植物の名前ではありません。当時、鯨は魚として扱われていたため、食肉が禁止されていた時代でも食べても問題のない食材とされていました。このため、「山」で獲れる猪肉や熊肉といった獣肉を、合法的な食材に見せかけるための総称として「やまくじら」と呼んでいたとされています。

今回ご紹介した「肉の隠語」の他にも、フグが猛毒に当たって死ぬ様子から「テッポウ」と呼ばれたり、ウサギが「月に住んでいる」という謂れから「月夜(げつよ)」と呼ばれるなど、日本語には生活と歴史に根ざしたユニークな別名が数多く存在します。

いかがでしたか?FUN! JAPANには、こうした日本語の奥深さや、日本の文化、習慣を扱った記事が他にもたくさんあります。興味を持った方は、ぜひいろいろな記事を読んでみてくださいね!

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