津波(つなみ、TSUNAMI)という日本語は今や世界で広く使われる共通語となっており、特に英語圏では非常に大きなものを指す形容詞として使われることが多いですが、日本では悲劇と結びついた言葉でもあり、今もなお多くの人々の心に深く刻まれています。当記事では、津波のメカニズムや歴史のほか、津波が起きたときの避難方法や津波警報の違いなど、災害時に役立つ情報も紹介します。
「津波」という言葉の重要性
「津波」はそれぞれ違う意味を持つ「津」と「波」を組み合わせた単語であり、「津」は船が停泊する港を意味しています。港に打ち寄せる波=「津波」は日本に限って発生する自然現象ではありませんが、1900年以降に世界で発生した主な地震・津波のうち、日本で起きている割合は16%を占めており、その中には死者数の多い津波も含まれています。
1896年に《ナショナル・ジオグラフィック》で発表された明治三陸地震津波に関するレポートでは、日本語の「津波」がそのまま「tsunami」として引用されており、小泉八雲の英語著作にも「tsunami」という言葉が用いられていましたが、発音しやすく、簡潔な言葉で現象を説明できるため、津波という言葉が世界中に広まるようになりました。
津波が発生するメカニズムは?
津波は海底の激しい動きによって引き起こされ、その多くは地震によって発生するものとされています。
日本は複数の海洋プレートと大陸プレートの接点上に位置しているため、地殻変動とそれに続く地震が頻繁に発生し、津波を引き起こす主な原因となっています。その他にも隕石の落下、地滑り、山体の崩壊や海に流れ込む溶岩等によって引き起こされる可能性があります。
津波は大量の海水が一気に押し寄せてくる現象で、その速さは水深で決まります。海岸に近づくにつれて水深が浅くなるため速度は落ちますが、それでも自動車が走るほどの速さで襲ってくることがあります。
プレートの動きによって引き起こされる津波は、海岸に近づくと数十メートルの高さまでかけのぼることがありますが、地滑りや隕石などによって発生する巨大津波は数百メートルもの高さに達する可能性もあります。
日本における「歴史的な津波」一覧
1771年:八重山地震(明和の大津波)
八重山地震により大津波が発生し、約1万1000人が死亡しました。かつて琉球王国の一部であり、現在は沖縄県の一部である石垣島と宮古島は深刻な被害を受けた上、80年間にわたる飢饉が発生しました。
1792年:島原大変肥後迷惑
雲仙岳の火山活動で大地震が起き、その結果眉山崩壊により有明海に流れ込んだ土砂が津波を発生させ、約1万5000人の死者が出ました。
1896年:明治三陸地震
岩手県沿岸で大きな地震が発生後、約30分後に巨大な津波が到達し、合わせて2万2000人以上が死亡しました。波の高さは30メートルを超え、東北地方太平洋沖地震前まで日本における観測史上最高の遡上高を記録していました。
1993年:北海道南西沖地震
北海道沖の奥尻地震により大津波が発生し、到達時間が非常に速かったため奥尻島を中心に死者が多数出ており、行方不明者含め230人に達しました。
2011年:東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
東日本大震災により壊滅的な津波が起き、死者・行方不明者が2万人以上となっており、日本における第二次世界大戦後最大の自然災害と言われています。
家屋の倒壊やライフラインの被害だけでなく、福島第一原子力発電所も津波の直撃を受け破損し、炉心溶融(メルトダウン)事故が起きました。10年以上経った今もなお、地震の大きな爪痕は残ったままです。
11月5日は「津波防災の日」と「世界津波の日」
津波防災の日は東日本大震災の教訓を活かし、津波から国民の生命を守ることを目的とした日です。
1854年の安政南海地震で大きな津波が和歌山県を襲った際に、稲に火を付けて高台に避難を促し、多くの人々の命を救った「稲むらの火」という逸話が残っています。この出来事を後世に語り継ぎ、津波への備えを促すため、11月5日が選ばれました。
この日に合わせて、全国各地で津波防災に関する訓練やイベントが行われ、改めて津波の恐ろしさを認識し、日頃から防災意識を高めることが呼びかけられています。
更に2015年には、11月5日が「世界津波の日」として国連で決議されました。日本だけでなく、世界中で津波に対する意識を高め、防災対策を進めるための国際的な取り組みがされています。
日本の津波警報システム
日本の津波警報システムは地震発生から数分以内に迅速かつ正確に津波に関する情報を全国に発信し、国民の生命と財産を守ることを目的としているもので、警報の種類に関しては津波注意報、津波警報、大津波警報の三つに区分されています。
津波注意報
- 予想される高さ:約1メートル
- 想定される被害:小型船舶が転覆し、海の中にいる人が流れに巻き込まれる可能性があります
- 対策:すぐに海から上がり、海岸から離れてください
津波警報
- 予想される高さ:約3メートル
- 想定される被害:標高の低い地域が被害を受け、浸水被害が発生する恐れがあります
- 対策:複数の津波が発生する可能性があるため、高台や避難ビル等より高い場所へ避難してください
大津波警報
- 予想される高さ:約5メートルから10メートル超
- 想定される被害:木造建築物は完全に破壊または流される可能性があります
- 対策:沿岸部や川沿いにいる人は高台または避難ビル等安全な場所へ避難してください
津波が起きたらどうすればいい?
津波はいつどこで発生するか予測が難しい災害なので、日頃から防災意識を持ち、万が一に備えておくことが大切です。
まず身の安全を確保する
津波は地震発生後わずか数分で到達する場合もあるため、揺れを感じたら、あるいは津波警報が発令されたら速やかに高台や丈夫な建物の上層階など安全な場所に避難してください。屋外にいる場合は津波警戒標識や津波避難経路図を確認し、現在地から避難場所への経路を把握の上行動しましょう。
情報を収集する
安全な場所に避難できたら、最新の津波情報をこまめに収集・確認し、安否状況を家族や会社に報告しましょう。
また、気象庁が配信する緊急地震速報や津波警報のメールを即時に受信できるよう、ご自身の携帯電話やスマートフォンで設定を行うことも可能ですので、合わせてチェックしてみてください。
【災害時に役立つアプリ・WEBサイトまとめ】
【LINE安否確認機能の操作手順】
① [ホーム]上部の[安否確認]バナー>[安否を報告]をタップします
② [無事]または[被害あり]をタップします
③ メッセージを入力し、[公開]をタップします
日頃から防災グッズを蓄えておく
防災グッズの準備に関する下記注意点を踏まえ、いざという時に備えておきましょう。
必要なものを厳選する
非常食、飲料水、懐中電灯、ラジオ、救急セット、携帯トイレなど生存に不可欠なものを優先的に用意してください。家族構成や持病など、個々の状況に合わせて必要なものもなるべく揃えましょう。
持ち運びに便利なものを選ぶ
防災グッズが多すぎると、避難時に持ち運びが大変になり、かえって危険な場合もありますので、避難時に持ち運ぶことを考慮し、コンパクトで軽量なものを選ぶようにしましょう。
定期的な点検と補充を行う
非常食や飲料水は定期的に賞味期限を確認し、新しいものと交換しましょう。また、懐中電灯やラジオの電池が切れていないか、救急セットの中身が揃っているかも忘れずに点検を心掛けてください。
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旅行中も「防災ポーチ」を持ち歩く
海や川が近い場所を訪れる時には、万が一の備えで防災ポーチを持つことがおすすめです。また、飲料水も切らさずにしておくと安心です。
津波防災は一人ひとりの意識と行動が大切です。ぜひこの機会に防災グッズの見直しをしたり、一緒に暮らしている人と防災について話し合ったりするなど、津波防災について改めて考えてみましょう。
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